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既存不適格とは?基礎から判定・売買・融資・改修まで徹底解説

「既存不適格」は、建築当時は適法だったものの、その後の制度改定で現行基準と一致しなくなった建物を指します。

本稿では、基礎→判定→売買・融資→改修→補助金・税金の順で、公的情報を踏まえて要点を整理。確認書類の集め方、価格やリスクの見方、使える制度までチェックリストで解説し、実務で迷わない進め方を提示します。

 

既存不適格の基礎

既存不適格とは、建設当時は適法でも、のちの法令・都市計画の変更により現行基準と合わなくなった状態を指します。違反建築と誤解されがちですが、当時の手続・基準を満たしていれば「適法に存続」できる点が前提です。

発生要因には、用途地域の見直し、建ぺい率=敷地面積に対する建築面積の割合・容積率=敷地面積に対する延床面積の割合の引下げ、二項道路に伴うセットバック、日影規制=一定時間の影の許容の導入や斜線制限の強化、自治体要綱の改定などが挙げられます。

 

戸建ての建替え時は現行基準の適用が前提になりやすく、区分マンションでは専有部の大規模改修が共用部基準に波及する場合があるなど、物件種別で影響は異なります。

売買・賃貸・投資・相続すべてにおいて、①当時適法の証拠、②現況の不適合点、③再建・改修の可否を三層で整理するのが基本です(地域差あり)。

 

【重要ポイント】

  • 建築確認=工事前の適法性審査/検査済証=完成時の適合確認を最初に確認
  • 主因は法改正・都市計画変更・条例や要綱のアップデート
  • 現況使用は許容でも、増改築・用途変更は現行適合が前提になりやすい
  • 戸建ては道路・斜線、マンションは避難・共用部基準の影響が大きい
  • 土地は建ぺい率・容積率・地目変更に留意(地域差あり)

 

用語の定義と合法性の基準

まず用語を揃えます。既存不適格=当時適法・現行は基準不一致、違反建築=当時から手続・基準に反する建築、建築確認済証=計画段階の合格通知、検査済証=完了時の合格証、竣工図=完成内容の公式図書、用途地域=許容用途の区分。

合法性は、当時の法令・告示・技術基準に照らし、設計→確認→検査→完了までの記録で裏づけます。例:築年当時は容積率200%で確認・検査済み→現行150%なら既存不適格だが違反ではありません。

賃貸マンションでは、新基準の非常用進入口・避難要件が導入されても、即違法とは限らず、増改築や大規模修繕の段階で現行適合が求められることがあります。相続・投資では、当時適法の立証と現行制約の特定をセットで行い、引渡書類に反映します(地域差あり)。

 

まず押さえる語の意味
  • 既存不適格=当時適法・現行不一致(違反とは別)
  • 違反建築=建築当時から手続・基準に不適合
  • 確認済証・検査済証=適法性を示す一次証跡
  • 用途地域・建ぺい率・容積率=建築可能量のルール

 

違反建築との線引き比較

両者の区別は、価格・融資・保険で直接影響します。既存不適格は「当時適法の確認」が核心、違反建築は「現在も是正が必要な違反か」が焦点。

売買では、既存不適格は事実の共有と将来制約の説明が重要で、価格調整は改修費・再建性・収益性への影響を基準に行います。

違反建築は是正計画が前提となり、融資・保険は不可または厳格化が目立ちます。専有部の改修が共用部の基準に影響する事例や、確認未取得の増築が混在するなど、両者が同居するケースもあるため、証憑と現地確認を丁寧に突き合わせます(地域差あり)。

 

項目 内容
建築時の適法性 既存不適格:適法に建築・検査済/違反建築:当時から不適法
是正の要否 既存不適格:現況維持は可。増改築等で現行適合が必要な場面あり/違反建築:是正計画が基本
取引・融資 既存不適格:条件付きで融資・保険の余地/違反建築:不可・厳格化が通例(機関差あり)
価格・相場 既存不適格:改修費・再建性を織込み調整/違反建築:是正費・リスクを大幅控除しがち

 

関係法令と条例の要点

参照枠組みは、建築基準法(構造・防火・避難・道路・斜線・日影等)、都市計画(用途地域・地区計画)、自治体の建築基準条例・指導要綱、景観・防火(準防火)・高度地区などの指定。

例えば、道路幅員の見直しに伴うセットバック、日影・高さ制限の導入・強化、耐震改修促進要綱の更新は、既存不適格を生みやすい典型です。

 

戸建ては道路・高さ・斜線、マンションは避難安全検証・非常用進入口、敷地は容積・建ぺいの変更や地目、地区計画の追加制限が影響。

条例・要綱は自治体差が大きいため、最新の告示・改正履歴・技術的助言を一次情報で確認し、契約書には制約内容と将来の手続負担を具体に記載します(地域差あり)。

 

実務で見落としやすい注意点
  • 地区計画・景観条例の追加指定→高さ・外壁材・色彩の制限が後付けで生じ得る
  • 前面道路の種別・中心線変更→セットバック量が増え再建規模に影響
  • 避難・防火基準の更新→専有部改修が共用部適合の論点へ波及
  • 要綱・技術基準の更新→自治体差が大きく旧解釈の流用は非推奨

 

既存不適格の判定

判定は、①当時適法の立証、②現況の実測・確認、③法令・条例との照合の三段階。まず、建築確認済証=計画審査合格、検査済証=完了時合格、建築台帳記載事項証明書=役所の登録事項証明、竣工図=完成図書で当時適法を裏づけ。

次に、敷地実測や平面・設備の現況を確認し、建ぺい率・容積率・斜線・日影・避難・防火・前面道路要件等に照らして差異を把握。

戸建ては前面道路幅員とセットバック、区分マンションは避難経路・非常用進入口、土地は地区計画や地目・用途地域の変更が要点。結論は重説・契約条項に反映し、価格・融資・保険・改修の判断へ接続します。

 

段階 主な関与者 要点
当時適法の立証 売主・管理会社・設計者・役所 確認済証・検査済証・台帳証明・竣工図の有無と整合
現況の把握 買主・仲介・建築士・測量士 敷地実測、各階面積、用途・避難・設備の現況確認
法令照合 建築士・行政窓口 用途地域・地区計画・条例・道路・斜線・日影の整合
結果反映 当事者全員 価格・条件・改修・融資・保険へ反映

 

確認済証・検査済証の入手チェック

起点は一次資料の収集。確認済証は建築前合格通知、検査済証は完成時の適合証。両方揃えば「当時適法」の強い証跡です。

紛失時は再発行不可が原則のため、建築台帳記載事項証明で代替し、竣工図・構造計算・設備図・各検査記録と整合確認。

 

分譲マンションは管理会社・理事会に保管があることも多く、共用部図書と専有部の改修履歴を併読。戸建ては旧耐震期の資料が散逸しがちなので、台帳証明+現況実測で補完。

賃貸・投資では書類不備が融資・保険条件へ波及しやすい点に留意(手数料・交付日数は自治体差あり)。

 

  • 窓口:市区町村の建築指導課等(本人確認・利害関係の確認が必要)
  • 台帳証明で確認番号・検査日・用途・面積・構造を突合
  • 検査済証が無い場合→用途変更・増改築時の審査が厳格になりやすい
  • 分譲マンション→管理規約・長期修繕計画・保管台帳の確認を同時に
  • 相続・売買→取得資料は重説・付帯資料として共有

 

現況調査と法適合差異の把握

現況調査は、敷地・建物・用途・避難・設備を計測・目視し、図書との相違を特定する工程。敷地は境界標・法務局図面・実測で面積(㎡)を確定し、前面道路の種別・幅員を確認。建物は各階の有効床面積を測り、バルコニー・ロフト等の算入扱いを図書と照合。

用途・避難は階段・廊下幅、非常用進入口、排煙・防火区画を確認。戸建ては高さ・斜線・セットバック、マンションは共用の避難・防火、オフィス・店舗は内装制限・用途変更の要否が焦点。

投資・賃貸では、差異が利回り・LTV・保険条件に波及。差異を特定したら、是正の要否→方法→概算費用の順で整理し、契約条件や価格調整に反映(地域差・金融機関差あり)。

 

現況調査で出やすい差異の例
  • 容積・建ぺい超過→バルコニー等の面積算入の誤認に注意
  • 道路・斜線・日影の不一致→前面道路の種別変更・中心線移動が原因
  • 避難・防火不足→非常用進入口・排煙・区画の新基準に未対応
  • 用途の相違→住居→店舗等で内装制限・設備基準が未適合
  • 違反増築の混在→既存不適格と違反が併存、是正計画の要否を判断

 

行政相談と専門家窓口の選定

解釈に迷う論点は事前相談を活用。建築指導課は建築基準法・条例、都市計画課は用途地域・地区計画、道路管理者は道路種別・幅員、消防は避難・防火が所管。

相談時は、確認番号・検査日・用途・面積・構造・配置図・平面図・写真を用意し、論点を一つずつ確認。行政は個別設計の可否判断に踏み込まないことがあるため、最終の技術判断・是正計画は建築士へ。

分譲マンションは管理会社・理事会と並走し、共用部基準・長期修繕計画との整合を取ります。結果は重説・特約、運用上の制約、改修計画・保険条件へ反映(地域差あり)。

 

論点 一次窓口 持参資料・要点
用途・容積・高さ 建築指導課/都市計画課 確認番号・台帳証明・配置図・各階平面図・計算根拠
前面道路・セットバック 道路管理者/建築指導課 道路台帳・幅員測量・境界資料・写真
避難・防火 消防/建築指導課 避難経路図・開口寸法・区画図・設備概要
景観・外観 景観担当部署 外観図・材料仕様・地区計画写し・写真
マンション共用部 管理会社/理事会 管理規約・長期修繕計画・図書保管台帳

 

既存不適格物件の売買・融資

売買・融資では、当時適法の立証と現況制約の見える化をセットで行い、価格・資金計画・保険条件へ一体的に落とし込みます。

買主は「再建・増改築は現行基準が前提」を理解し、セットバック量、用途地域の変更見込み等の運用制約を把握。

 

売主は確認済証・検査済証・台帳証明・竣工図など一次資料、インスペクションの有無・結果、区分なら管理費(月額・円)・修繕積立金(月額・円)・長期修繕計画(年次)を開示。

融資は機関差が大きく、積算重視か収益重視かで評価軸が異なります。賃貸・投資は、賃料(円/月)・空室率(%)・経費率(%)・返済条件(年利%・期間年)を前提に、DSCR=年間NOI/年間返済額で耐性を確認。

 

  • 当時適法の証跡を整合(確認済証・検査済証・台帳証明・竣工図)
  • 再建・増改築は現行基準が前提→セットバック・高さ制限を早期試算
  • 価格調整は改修費・再建性・収益性を基準に算定
  • 融資手法(積算・収益・事例)の重み付けは金融機関差あり
  • 保険は再調達価額か時価か、基準適合費用特約の要否を確認
  • 区分は管理の健全性(費用・計画・議事録)を重視

 

重要事項説明の記載漏れチェック

重説では、既存不適格の事実・発生要因・現況制約・再建時の前提・関連法令等を具体に記載。戸建て・土地は前面道路の種別・幅員、セットバック量、建ぺい率(%)・容積率(%)、用途地域・高度地区・景観規制等を明示。

区分は敷地権の内容、専有面積(㎡)の算定方法、管理費・修繕積立金(月額・円)、長期修繕計画、共用部の避難・防火との関係を整理。

インスペクション(2018年4月1日以降の説明項目)は実施有無・結果概要を記載。運用上の制約は「目安」も示し、認識差を最小化します。

 

記載漏れ防止チェック(抜粋)
  • 既存不適格の発生要因と時点(法改正・都市計画・条例変更 等)
  • 確認済証・検査済証・台帳証明・竣工図の有無と主要数値の整合
  • 前面道路の種別・幅員、セットバック要否と概算後退量(m)
  • 建ぺい・容積・用途・高度・日影・景観など制限の具体
  • 区分事項(敷地権、管理費・積立金、長期修繕計画)
  • インスペクションの有無・結果(実施日・指摘の有無)
  • 増築・用途変更履歴、再建時の留意点(申請要否・適合範囲)

 

融資可否と評価手法の目安

融資は、①違反建築ではないこと(当時適法を一次資料で説明できるか)、②担保評価の再現性(将来も合理的に説明できるか)、③返済原資の確実性——の三要素で総合判断されます。自用住宅は安全性・適合性を重視、投資用は収益性・出口可能性を重視する傾向です。

評価は、積算(再調達原価・減価+土地)、収益還元(NOIと資本化率/DCF)、事例比較の三本柱を組み合わせます。既存不適格は建物価値が保守的に見積られやすく、土地寄りの評価になりがちです。

 

【重要ポイント】

  • LTV(融資額/価格)は自用で概ね70〜85%、投資で60〜75%に収れんしやすい(機関差あり)。
  • DSCR(NOI/年間返済額)は1.1〜1.3以上が求められる場面が多い(収益変動・改修費の上振れを考慮)。

 

評価手法 着眼点 既存不適格の影響
積算 土地=公的指標・近傍事例/建物=再調達原価・減価 建物は控えめ評価→LTVが下振れしやすい
収益還元 NOIを資本化率で還元(またはDCF) 改修負担・再建制約を織込み→利回り要求が上振れ
事例比較 用途・規模・築年・制約の近似性を重視 適合事例が乏しいと補正幅が大きくなる

 

数値イメージ(前提を明示)
  • 価格3,200万円・LTV70%→融資2,240万円、金利2.0%・30年元利均等の年間返済は約99万円。
  • NOI120万円ならDSCR=約1.21→基準を満たす一例(前提により変動)。

 

火災保険・特約の付帯比較

再建時は現行基準への適合費用が発生しやすいため、保険は「評価方式」「補償範囲」「追加特約」をまとめて設計します。

評価方式は再調達価額(同等建物の再築費)と時価(再調達価額−経年減価)の二択が基本で、再建前提なら前者が主流です。

 

補償は水災・風災・破損汚損・漏水の要否を立地と築年で選別し、地震は上乗せの地震保険(主契約の一定割合が上限)で手当てします。

現行適合に伴う追加費用は「建築基準法等の費用」系の特約(保険会社により名称差)で補填可否を確認します。区分所有は共用部と専有部が重複・空白にならないよう、管理規約と証券で突き合わせます。

 

【重要ポイント】

  • 評価方式(再調達価額/時価)と上限金額の妥当性を先に確定。
  • 基準適合費用特約・残存物取片付け費・臨時費用の枠を確認。

 

項目 チェック観点
評価方式 再調達価額/時価の選択、評価基礎・上限の整合
基準適合費用 再建時の追加費用をどの範囲まで補填できるか
水災・風災等 ハザードと設備更新計画に応じた付帯の要否
地震保険 付帯上限・免責・評価基礎の確認

 

選び方のコツ
  • ハザードマップと設備点検記録を根拠に補償範囲を決定。
  • 免責を上げれば保険料は下がるが小口損害の持出しが増える点に留意。

 

契約解除条項と違約金の注意点

契約は、既存不適格に伴う不確実性(認識差・審査不成立・追加工事)を吸収する条項設計が重要です。

ローン特約(停止条件/解除条件)は、審査結果の証憑提出方法・期限・再申込の有無・金利上振れ時の扱いを明記します。

契約不適合責任は、既存不適格が直ちに「不適合」とは限らないため、開示範囲と用途適合の合意を文書化します。手付解除・違約金は、金額や算定式、通知期限、上限、損害賠償との関係を具体化します。

 

条項 目的 実務メモ
ローン特約 不成立時の解除・手付処理の明確化 証憑様式・期限・再申込の可否・金利変動時の扱い
契約不適合責任 開示・補修・減額・解除の範囲整理 用途適合の合意と既存不適格の開示事項を明文化
手付解除 自由解除の枠組み 行使期限・手付額・倍返し条項の整合
違約金 不履行時の清算基準 固定額/割合・上限・損害賠償との関係

 

揉めやすいポイント
  • 承諾・測量・越境是正の費用負担と上限額を特約で数値化。
  • 期限(通知・申請・決済)と遅延時の代替手順を条文化。

 

改修・再建の方針

改修の優先順位は、◯生命・避難の安全→◯構造(耐震)→◯雨水・防水→◯電気・給排水等ライフライン→◯外装の劣化対応→◯意匠・内装の順に設定します。既存不適格は現況使用が直ちに違法ではない一方、増改築・再建では現行基準適合が前提です。

戸建ては前面道路幅員・高さ・斜線の影響が大きく、区分所有は共用部の避難・防火基準と管理規約が方針を拘束します。

賃貸・投資では、賃料(円/月)・空室率(%)と改修費(円)から回収年数を算出し、DSCRが低下しない資金配列を組みます。

 

【重要ポイント】

  • 再建時はセットバック量・高さ制限・用途制限を先に試算。
  • 相続・売買は、改修前提の価格調整と工事分担・期限を特約で固定。

 

耐震補強と老朽設備の優先順位

耐震診断(Is値=上部構造評点)で現況を把握し、目標水準と工法を決めます。木造は耐力壁追加・金物補強・基礎一体化、RCは耐震壁増設・鋼ブレース・CFRP等が代表例。

老朽設備は漏水・漏電・火災のリスクがあるため、給排水・防水・受変電・避難設備を優先更新します。

費用は構造・規模で変動し、一部は内装復旧費を伴うため、工区分けと仮住まい費も含めて総額管理します。

 

項目 費用の目安 実務の要点
木造耐震補強 100〜300万円/戸(規模・劣化で変動) 耐力壁・金物・基礎補強→Is値の前後評価を実施
RC耐震補強 数百万円〜数千万円(規模依存) 補強計画と避難・防火の整合を事前確認
屋上・外壁防水 50〜200万円規模(小規模例) 雨漏りの連鎖被害(内装劣化等)を遮断
給排水・電気 数十万〜数百万円 漏水・漏電の予防→継続使用性と保険条件に寄与
避難・防火設備 数十万〜数百万円 非常用照明・誘導灯・感知器を基準に沿って更新

 

用途変更・増改築の可否比較

用途変更(例:住居→店舗)は、収容人員・防火区画・排煙・非常用進入口・内装制限などの基準が変わります。既存不適格は現況維持が許容でも、申請段階では原則として現行基準への適合が必要です。

 

【重要ポイント】

  • 戸建て→店舗:駐車・換気・騒音・近隣調整、内装の不燃化を事前整理。
  • 倉庫→事務所:床荷重・採光・衛生設備・避難計画の確保が鍵。
  • 容積率・建ぺい率の超過があると、増築余地は限定的。
  • 区分所有は管理規約(住居専用)と共用部適合がボトルネック。

 

申請時の落とし穴
  • 既存図と現況図の不一致→面積算入や開口寸法の取り扱いに注意。
  • 工期・休業損の見落とし→資金繰り・賃貸借条項へ波及。

 

既存住宅状況調査の活用チェック

既存住宅状況調査(インスペクション)は、劣化・雨漏り・給排水・躯体等を第三者が点検する制度です。

法適合の判定制度ではありませんが、売買では説明項目で、価格調整・改修合意・瑕疵保険の判断材料に有効です。賃貸・投資でも、入居前是正の優先順位付けや保険請求の証憑整備として機能します。

 

項目 内容 実務のヒント
調査範囲 目視中心(劣化・雨漏り・給排水・躯体) 点検口・小屋裏・床下の確認可否を事前合意
実施者 所定講習を受けた建築士等 写真・位置図を添付し契約書類へ反映
費用目安 数万円〜十数万円 複数見積で調査深度・写真点数を比較

 

活用ポイント
  • 結果の要点を重説・特約・是正計画へ反映。
  • 補助金・税制・ローン審査の基礎資料として転用。

 

再建築不可時の代替策の選び方

接道要件等を満たさず建替えができない場合、次の順で検討します。

 

【手順・ステップ】

  1. セットバックでの充足可否を判定→後退量(m)と建築可能面積(㎡)を試算。
  2. 隣地の一部取得・通路共有で接道確保の可能性を検討。
  3. 建替え困難なら、内外装・設備更新や用途転換(賃貸・SOHO・トランクルーム等)で収益維持。
  4. 共同建替え・等価交換・買取再販等を比較し、価格と時間軸を最適化。

 

検討のコツ
  • 賃料(円/月)×稼働の改善幅と改修費(円)から回収年数を算出。
  • 出口は借地権設定や定期借家なども選択肢に入れて柔軟に設計。

 

補助金・税金の制度

改修負担の圧縮は、◯国の支援(耐震・省エネ・長寿命化)◯自治体の上乗せ◯税制(固定資産税の減額・所得税控除)を組み合わせます。

制度は年度ごとに上限・対象・募集時期が更新され、自治体差が大きいのが特徴です。戸建ては耐震・断熱・バリアフリー、区分は専有部の省エネ・バリアフリーや管理組合による共用部の耐震・外壁・配管が対象になり得ます。

投資・賃貸は居住用限定の制度が多く、適用外や上限縮小に注意します。

 

制度区分 典型的対象工事 実務の要点
国の補助 耐震補強、断熱窓・外皮、高効率設備、長寿命化 原則:着工前申請・交付決定後着手。上限額と採択時期に留意
自治体補助 木造耐震、バリアフリー、一般リフォーム 市区町村要綱・様式で手続。事前相談を活用
税制 固定資産税の軽減、所得税の各種特別控除 一次情報で要件・対象年分・提出書類を確認

 

改修補助金と減税制度の対象把握

対象判定は「物件種別」「用途」「工事項目」で行います。戸建ては耐震(Is値の改善)、外皮断熱(窓・天井・外壁・床)、高効率給湯・空調、手すり・段差解消等。区分は専有部が個人申請、共用部は管理組合申請が通例。

土地単体は原則対象外ですが、建物一体の外構が対象となる場合もあります。既存不適格は「現況維持は可でも、工事申請は現行適合が前提」となるため、性能値(断熱・Is値・機器効率)を事前に数値確認します。

 

【重要ポイント】

  • 投資・賃貸は自用限定の制度が多い→適用可否を早期判定。
  • 達成基準・必要図書(証明・領収書等)は一次情報で確認。

 

申請手順と必要書類の準備チェック

原則は「着工前申請・交付決定後着工」。遅延・不足は不採択や適用外の原因です。

 

【手順・ステップ】

  1. 要件確認:対象工事・性能基準・対象主体(個人/管理組合/法人)を一次情報で確認。
  2. 見積取得:数量・単価(円)・合計(円)・工期(日)を明示。
  3. 事前相談:自治体窓口・管理組合・設計者で必要図書を確定。
  4. 申請:申請書・図面・仕様書・工程表・契約書(写し)・同意書を提出。
  5. 交付決定:通知後に着工。変更は速やかに承認手続。
  6. 実績報告:領収書(円)・写真・完了報告・性能証明を提出。
  7. 税手続:確定申告または税務課の様式で処理(期限厳守)。

 

不採択・不適用の典型要因
  • 着工前申請の失念/交付決定前の契約・着工。
  • 性能基準の読み違い(断熱区分・Is値・機器効率)。

 

固定資産税・所得税の注意点

固定資産税の軽減は、耐震・省エネ・バリアフリー等の一定改修に対し、翌年度の家屋分を軽減(一般例:床面積120㎡相当分まで)。要件・申告期限・様式を外すと不適用となります。

所得税は、増改築等借入金控除(リフォーム型)、耐震・省エネ・バリアフリーの各特別控除、投資型減税などが代表例で、控除率・期間・上限は制度ごとに異なります。

 

税目 主な対象 留意点
固定資産税 耐震・省エネ・バリアフリーの一定改修 翌年度軽減/床面積120㎡相当分が一般例/期限と様式を厳守
所得税(個人) 増改築等借入金控除、耐震・省エネ・バリアフリー特別控除、投資型減税 控除率・期間・上限は制度別→証明書・領収書の保存必須
法人税 資本的支出(償却)/修繕費(損金)の区分 効果・金額・耐久性で判定→税理士と事前整理

 

自治体サイトと公式検索の活用

情報は一次情報で確認します。市区町村サイトの「住宅リフォーム」「耐震改修」「省エネ支援」等を起点に、なければ都道府県の住まい関連ページで要綱・手引・様式集を入手。

税制は国税庁の最新解説で控除率・適用年分・必要書類を確認、固定資産税は市区町村税務課の様式と期限に従います。

 

検索・確認のコツ
  • 検索語:自治体名+制度名/要綱/手引。
  • 告示日・更新日・適用年度を必ず確認。

 

まとめ

「当時適法の立証→現況差異の可視化→法令照合→価格・資金・保険・改修への反映」を手順化すれば、既存不適格でも判断を誤りにくくなります。

融資はLTV・DSCRの基準感、保険は基準適合費用の特約、契約はローン特約と不適合の合意を明確化。改修は耐震を最優先に、補助金・税優遇は着工前に要件を確定。一次情報に基づき、根拠と時点を明示して進めましょう。