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借地権の年数が丸わかり!期間の決まり・更新料の4つのポイントと注意点

借地権の年数は、普通借地は「初回30年→次回20年→以後10年」、定期借地は「満了で返還」が基本線です。ここを押さえると、更新料や各種承諾費用、売買価格・融資期間への影響が読み解けます。

本稿は「基礎→相場→制度→手順→リスク」の順に、残存年数の測り方と期限管理を実務に合わせて再構成。迷いがちな論点を要点化し、判断の土台を提供します。

 

年数の基礎

借地権の年数とは、他人の土地を借りて自分の建物を所有・使用できる期間です。設計は大きく「普通借地権(更新を前提)」と「定期借地権(満了で返還)」に二分され、契約条項と法の枠組みで運用されます。

普通借地権は初回期間が長く、更新を重ねて継続する前提。定期借地権は再契約を想定しない期限設計で、居住用の長期利用から事業用まで類型があります。

 

実務では、とくに「残存年数(今日から満了まで)」が価格・承諾料・更新料・融資年限に直結。戸建ては生活設計と更新時期の見通し、区分(借地権付きマンション)は敷地権の持分・管理規約の制約、事業用は原状回復やテナント契約の満了同期が焦点です。

まず「類型・起算日・満了日・更新規定・承諾要否」を契約書で特定し、残存年数を把握したうえで計画に落とし込みます。

 

【重要ポイント】

  • 普通か定期か→出口の違いを最初に確認
  • 残存年数→価格・融資・修繕・建替計画に直結
  • 契約条項→更新料・承諾料・増改築の可否を精査

 

借地期間の基本整理と区分

借地権は「建物所有を目的とする地上権または賃借権」の総称です。期間設計は、更新前提の普通借地権と、満了返還を前提とする定期借地権に二分。普通は戸建て等の居住継続に向き、増改築・建替えは契約条項と承諾の有無で判断します。

定期は〈一般定期(長期居住向け)〉〈事業用定期(店舗・オフィス等)〉〈建物譲渡特約付(満了時に建物を譲渡)〉などがあり、いずれも更新期待を置かない出口設計が特徴。

 

区分(借地権付きマンション)は、専有と不可分の敷地権として期間管理され、管理規約・使用細則に沿って運用されます。

投資判断では、将来の建築可否や接道、建ぺい率・容積率等の法条件が年数戦略へ影響。まず契約で「期間・更新・建替・譲渡・転貸・承諾料」等の条項を読み、過去の更新実績・授受履歴と合わせて位置づけるのが安全です。

 

類型 期間設計の目安 満了・更新の基本
普通借地権 初回は長期、以後は更新で継続 更新を前提。更新料・条件は契約で確認
一般定期借地権 長期の一括期間 更新なし。満了で更地返還が基本
事業用定期借地権 用途に応じた中〜長期 更新なし。原状回復や買取規定を確認
建物譲渡特約付 長期の一括期間 満了時に建物譲渡で整理

 

初回期間と更新時期の目安

普通借地権は、初回30年→最初の更新20年→以後10年が一般的な運用目安です。更新時は、更新料の有無や条件変更(地代改定・修繕負担等)が契約で定められることが多く、過去の更新実績・地域慣行も交渉材料になります。

定期借地権は更新を前提にしないため、一般定期は居住向けの長期一括期間、事業用定期は投資回収期間に合わせた中長期、建物譲渡特約付は満了時に建物を譲渡して決着させる設計です。

戸建ては更新期の数年前から修繕・建替えの承諾方針を整理、区分は敷地権の残存年数と長期修繕計画の整合、事業用はテナント契約・原状回復・設備耐用年数の同期が要点です。

 

【重要ポイント】

  • 普通借地=30→20→10年の目安で整理
  • 定期借地=更新なしの出口前提で初期から設計
  • 更新・承諾・費用=契約条項と実務履歴で具体化

 

定期借地の満了時の出口選択

定期借地権は満了で返還が前提のため、締結時から出口を設計します。一般定期は長期利用後の更地返還が基本で、解体・撤去や譲渡の可否を契約で確認。

事業用は、原状回復の範囲・スケジュール、テナント退去・設備撤去の費用見積りを前倒しで着手。

 

建物譲渡特約付は、満了時の建物譲渡価額・引渡条件・修繕状態の基準を事前合意しておくと紛争抑止につながります。

相続・売買予定があるなら、残存年数が短いほど価格・融資に不利になりやすいため、修繕を最小とするか、等価交換・同時売買・底地買取などの早期整理へ舵を切る判断が現実的。

区分は、敷地権の残存年数と大規模修繕周期のズレが管理計画に影響するため、組合の合意形成を含むロードマップが必要です。

 

出口設計のヒント
  • 満了5年前を目安に、原状回復・資金・引渡条件を確定
  • 譲渡・等価交換・底地買取など代替案を早めに比較

 

物件別にみる年数の考え方

戸建て(自用)は、生活継続を最優先。更新期の数年前から残存年数と修繕計画を並べ、建替・大規模改修の承諾可否・費用、更新料の有無を整理します。

銀行融資は返済期間と借地残存年数の整合を見るため、年数が短いと返済年限が制約されることがあります。

区分(借地権付きマンション)は、敷地権の残存年数・管理規約・長期修繕計画・修繕積立金(円/月)の水準を一体で評価。

 

事業用は、テナント契約の更新・退去、原状回復費、設備の税務耐用年数と借地の残存年数を同期させると投資回収が明快です。

土地の将来活用を想定するなら、用途地域、建ぺい率(敷地面積に対する建築面積の割合)、容積率(敷地面積に対する延床面積の割合)、接道条件を先に確認し、満了後の出口と矛盾しない年数戦略を描きます。

 

【重要ポイント】

  • 戸建て→更新・修繕・承諾の三点を早期に可視化
  • 区分→管理計画と残存年数の整合を重視
  • 事業用→原状回復・テナント・設備年数を同期

 

借地権の年数と相場

相場は、路線価(毎年7月公表)や倍率等で把握する自用地価格、そこに掛ける借地権割合、さらに契約条項(更新・譲渡・増改築・承諾料)と残存年数の組み合わせで決まります。

まず自用地価格を把握→借地権割合を適用→年数による市場性補正、の順で整理。戸建ては居住継続性、区分は敷地権持分と管理規約、事業用は残存年数×原状回復×テナント契約の同期が焦点。

相場は地域差・個別差が大きく公的な一律基準はありません。本節は「読み方の基礎」「費用目安」「年数と価格の関係」「金融機関の見方」を手順化し、根拠の種別・時点を明記して再現性を高めます。

 

【重要ポイント】

  • 路線価×地積×補正=自用地価格の起点
  • 借地権割合の適用=借地権価格の基礎
  • 残存年数・契約制限=市場性の補正要因

 

路線価と借地権割合の読み方基礎

路線価は相続税評価用の1㎡単価(千円表示)で、対象地が「路線価地区」か「倍率地区」かをまず判定します。

路線価地区は前面道路の路線価×地積(㎡)に奥行・二方路・不整形などの補正率を反映。倍率地区は固定資産税評価額×倍率で把握します。

 

借地権割合は図上の記号A〜Gで示され、概ねA=90%、B=80%、C=70%、D=60%、E=50%、F=40%、G=30%の目安(最新年度ベース・記事時点2025年11月)。

区分は複数筆の敷地が多く、各筆の路線価・割合・持分按分を管理資料と突合。戸建ては接道・奥行補正の影響が大きく、事業用は用途地域・容積率(敷地面積に対する延床面積の割合)で価値の出方が変わります。

 

【手順・ステップ】

  1. 地区区分の確認→路線価地区か倍率地区か
  2. 自用地価格の算出→路線価×地積×補正(または倍率)
  3. 借地権割合の適用→借地権価格の基礎値を算定

 

記号 借地権割合の目安 留意点
A 90% 中心部で高水準となりやすい
B〜D 80〜60% 一般的な住宅地レンジ。補正率で差が出る
E〜G 50〜30% 郊外等で市場性補正が強く出やすい

 

【計算例(前提を明示)】
前提:路線価30万円/㎡(最新年度)、地積100㎡、補正1.00、借地権割合60%(D)
自用地価格=30万円×100㎡=3,000万円
借地権価格の基礎=3,000万円×0.60=1,800万円

 

更新料と承諾料の目安レンジ

更新料・承諾料(名義書換・増改築・建替等)は法定の一律金額がなく、契約条項・地域慣行・方針で幅があります。

実務で参照される例として、名義書換料=借地権価格の1〜5%または地代の数か月〜数年分、増改築承諾料=更地価格(路線価基礎)×0.5〜3%、建替承諾料=借地権価格の数%〜10%前後(いずれも相場目安・記事時点2025年11月)。

 

公的相場ではないため、路線価年度・補正・近傍事例・鑑定等で根拠補強し、支払条件は書面化します。区分は管理組合手数料が別途必要な場合あり。

戸建ての相続直後の譲渡・建替は費用項目が重なりやすく、タイムラインとキャッシュフローの整合が重要です。

 

費用名 根拠の出し方 提示レンジの例(目安)
名義書換料 契約条項・借地権価格 1〜5%または地代の数か月〜数年分
増改築承諾料 更地価格×規模・用途補正 0.5〜3%程度
建替承諾料 借地権価格・更新条件 数%〜10%前後

 

費用交渉の注意点
  • 名称より対価性→何に対する承諾かを明確化
  • 根拠の保存→路線価年度・補正明細・見積・鑑定の写し

 

残存年数と売買価格の関係性

残存年数が短いほど、市場は更新・承諾・再投資の不確実性を織り込み、価格はディスカウントされがち。

実務は「借地権価格の基礎値(路線価×地積×補正×借地権割合)」から、残存年数・契約制限・越境や未払等の是正コストを差引いてネット価格を決めます。

区分は長期修繕計画と残存年数のズレが大きいほど買い手の評価が厳格化。戸建ては居住継続性、事業用は原状回復・退去費・設備耐用年数との同期が鍵です。

 

以下は概念整理の目安で、公的基準ではありません(記事時点2025年11月)。

残存年数 市場性の目安 基礎値に対する掛け率例
20年以上 実需・金融が取り組みやすい 0.9〜1.0
10〜20年 用途・条項次第で差が拡大 0.7〜0.9
10年未満 承諾・更新前提で調整幅が大 0.5〜0.7

 

【計算例(前提を明示)】
前提:基礎値1,800万円、残存9年、越境是正50万円、名義関係整備30万円
概算ネット価格=1,800×0.6−(50+30)=1,080−80=1,000万円弱

 

【重要ポイント】

  • ネット価格=基礎値×年数補正−是正コスト
  • 補正率は地域・条項・金融条件で変動→目安扱い

 

銀行評価と融資審査の見方

金融機関は、返済期間≦借地残存年数(+安全余裕)を基本に、権利類型(地上権登記or賃借権)、承諾条項、地代水準、更新・建替の可否、未払の有無を総合評価します。一般に地上権の方が担保適性は高く、賃借権は条項次第でLTVが抑制されがち。

戸建て住宅ローンは残存年数が短いほど返済期間が短くなり月返済が上振れ。区分は敷地権残存年数と大規模修繕計画の整合、管理費・修繕積立金(月額)の妥当性が審査へ影響。

事業用は、賃料・空室率・原状回復費と借地期間の同期が必須。記事時点2025年11月の実務感では、借地のLTVは所有権に比べ抑えめ(例:60〜80%目安)、金利・期間は個別審査です。

 

審査の観点 内容
契約類型 地上権登記の有無、賃借権の譲渡・転貸・増改築条項
年数整合 返済期間≦残存年数、更新期待の根拠(合意・実績)
費用水準 地代・更新料・承諾費用の見込みと収支反映
管理・是正 未払(地代・管理費)・越境・法令適合の是正計画

 

【提出書類の例】

  • 借地契約書・覚書・承諾関連書類
  • 登記事項証明書(建物・敷地権/地上権)
  • 路線価計算明細(年度・補正)・資金計画書

 

融資を通しやすくする工夫
  • 残存年数と返済期間の整合→期間短縮や自己資金増で調整
  • 承諾・更新の合意見込み→書面や過去実績で補強

 

借地権制度とルール

運用の柱は「期間の決まり」「相続承継の扱い」「登記と対抗関係」「承諾が得られない場合の救済」の四点。

制度骨格は借地借家法で、普通借地は更新継続、定期借地は満了返還を前提に出口を明確化します。相続は原則承諾不要ですが、名義変更届・地代口座変更等は早期に実施すると円滑。

 

登記は、賃借権は原則登記がない一方、自己名義の建物登記により第三者対抗力を補う特例があり、建物滅失時は効果が弱まる点に注意。

承諾が得られない譲渡・転貸・増改築・建替えは、裁判所の「許可」で代替できる仕組みがあり、対価・信用等の事情を総合して可否が決まります(個別判断)。

 

【重要ポイント】

  • 期間規定=普通は更新前提、定期は満了返還
  • 相続承継=承諾は原則不要だが届出は必須実務
  • 登記と対抗=建物登記で賃借権の対抗を補完

 

借地借家法における期間規定

期間は資産計画・価格・融資・修繕の前提。普通借地権は初回30年、更新20年、再更新10年が目安。定期借地は更新想定なしで、契約時から出口(返還・譲渡・買取等)を規定。

事業用は住居不可で、契約方式や期間帯が異なります。建物譲渡特約付は満了時に建物を譲渡して関係を整理。一時使用目的は短期の仮設等で保護は弱め。

 

類型 期間の目安 契約方式・満了取扱い
普通借地権 初回30年、最初の更新20年、以後10年 更新継続が前提。更新料・条件は契約で確認
一般定期借地権 50年以上 書面で定期の旨を明記、更新なし・更地返還
事業用定期借地権 10年以上50年未満 公正証書等。住居不可、原状回復が前提
建物譲渡特約付 30年以上 公正証書等。満了時に建物譲渡で決着
一時使用目的 短期(通常1年未満) 仮設等を想定。更新期待は置かない

 

【手順・ステップ】

  1. 契約書で「類型・期間・更新・満了処理」を特定
  2. 更新実績・覚書・承諾履歴を収集
  3. 残存年数と修繕・資金・出口をカレンダー化

 

相続承継と名義変更の留意点

相続承継は原則として地主承諾を要しませんが、通知・名義変更届・相続関係書類(法定相続情報一覧図等)・建物登記事項・地代口座変更をまとめて行うと実務が滑らか。

相続人が複数なら準共有となり、更新・譲渡・増改築・建替えは共有者の同意が必要。区分は敷地権持分が専有と不可分に動くため、管理組合への届出・口座変更も並走。

 

相続登記は義務化され、相続開始・取得を知った日から原則3年以内の申請が求められます(記事時点)。住所・氏名変更登記の期限管理も忘れずに。

未払地代・越境・未登記増改築がある場合は、承継直後に是正計画を示すと更新・承諾の協議が進みます。

 

【手順・ステップ】

  1. 契約・登記・図面の三点突合→条項・境界・現況を確認
  2. 相続人確定→遺産分割で帰属方針(単独か共有か)を決定
  3. 地主・管理会社へ通知→名義変更届と支払口座の切替

 

登記関係と対抗要件の整理

地上権は物権で、土地へ登記すれば第三者対抗可。賃借権は債権で、原則登記がなければ対抗が弱い性質ですが、自己名義の建物登記があれば第三者へ対抗できる特例があります。

したがって、戸建・長屋では表題・保存登記を自己名義で備えることが実務の分岐点。ただし建物滅失中は特例が使えず、対抗力が弱まる点に注意。

区分は専有登記+敷地権付記で整理され、規約に従って運用します。売買・融資では、権利の種類(地上権/賃借権)、対抗の有無、担保設定の可否が価格・融資に直結します。

 

権利類型 第三者対抗の考え方 実務メモ
地上権 土地への登記で対抗可 譲渡・担保設定が比較的柔軟
賃借権(借地) 建物登記で対抗力を補完 滅失中は弱まる→建替え時は覚書で補強
区分(敷地権) 専有登記+敷地権付記で整理 規約・使用細則に従い運用

 

登記まわりの注意点
  • 未登記増改築の放置→是正費・承諾交渉が難航
  • 建物滅失期間→対抗力が低下。事前の覚書で条件固定

 

許可申立の活用場面と要点

承諾が得られない場合でも、裁判所に「許可」を申し立てて代替できる制度があります(譲渡・転貸・増改築・建替え等)。

判断では、借主の信用、違反の有無、対価の相当性、近隣影響、契約条項・運用実績等が総合評価。認められる場合は、地代増額・保証金・工事制限などの条件付与があり得ます。

実務は、承諾申請の経緯・理由、図面・工期・安全計画・近隣配慮などの資料、代替案、金銭根拠を整え、交渉と申立を並走。区分は管理組合の承認経路が別にあるため、先に規約・細則を確認します。

 

【手順・ステップ】

  1. 承諾申請の記録化→理由・提出物・回答状況を整理
  2. 対価根拠の整備→路線価・借地権割合・見積・鑑定で裏付け
  3. 申立書作成→証拠・条件案を添付して提出

 

借地権の手順とチェック

実務は「資料収集→現況確認→年数の確定→地主連絡・同意取得→更新・承諾・登記等の処理→台帳保管」の流れで進めると迷いません。はじめに契約書・覚書・承諾書・増改築許可・地代領収・未払通知を集め、登記事項(建物/敷地権・地上権)と突合。

次に、公図・地積測量図・確定測量図で境界・越境の有無を確認し、用途地域・建ぺい率・容積率・接道等の都市計画情報を整理。

 

年数は「起算日・満了日・更新条件・通知期限」を基準に残存年数を算出し、売買・相続・賃貸・建替えの各ケースで必要書類・費用見込みを並べます。

戸建ては居住継続と更新方針、区分は管理規約・敷地権持分、事業用は原状回復・テナント契約の同期を重視。最後に、逆算表とチェックリストを作り、承諾要否・根拠・費用・提出先・審査期間を一枚で管理します。

 

【重要ポイント】

  • 三点突合→契約・登記・図面の整合を先に確認
  • 残存年数→起算日・満了日・通知期限から逆算
  • 承諾要否→条項・運用履歴・対価性で判断

 

契約書と公図・測量図の確認順序

第一関門は「紙の整合」。契約・覚書・承諾書を一式集め、期間・更新・譲渡・転貸・増改築・建替・名義書換料・地代改定・解除の各条項を原文確認。

続いて登記事項(建物・敷地権/地上権)で名義・権利種類・負担を照合し、齟齬の有無を点検。

 

図面は、公図・地積測量図・確定測量図・地籍調査成果で筆界・面積・私道負担・地役権・越境の有無を確認し、現況写真と突合。

都市計画(用途・建ぺい・容積・道路種別・斜線・日影)で法適合を整理し、建築確認済証・検査済証の保管状況も確認。

区分は規約・細則・長期修繕計画・総会議事録を合わせ、敷地権持分・運用制約を把握。差異や懸念は「是正タスク」としてメモ化し、承諾・測量・補修・登記で解消計画を立てます。

 

【手順・ステップ】

  1. 契約・覚書・承諾書の収集→条項別にチェック
  2. 登記事項の取得→名義・権利・負担を照合
  3. 公図・測量図・現況の突合→境界・越境・面積差を抽出
  4. 都市計画・建築資料の確認→法適合の前提整理
  5. 差異のリスト化→是正タスクと期限設定

 

資料 確認観点
借地契約書・覚書 期間・更新・譲渡転貸・増改築・承諾料・地代改定・解除
登記事項証明書 建物の権利、敷地権/地上権、権利部の負担
公図・測量図 筆界・面積・越境・私道負担・地役権の有無

 

残存年数の測り方と記録方法

残存年数は「満了日−基準日」で算出。普通借地は30→20→10年の枠を目安に、契約で別段合意がないか確認。

定期は更新を想定せず、満了日を絶対期限として扱います。覚書等が複数ある場合は最新合意が優先されるため、日付・効力・改定内容を台帳で整序。

 

通知期限(例:満了◯か月前)や承諾申請のリードタイム(審査目安)も同じシートで管理すると、売買・融資・建替のスケジュールが崩れにくくなります。

区分は敷地権残存年数と長期修繕計画のズレ、事業用は退去・原状回復・設備耐用年数の同期が重要。

 

【記録項目の例】

項目 内容 備考
起算日 契約開始日(更新なら覚書の効力発生日) 条項番号・原文の写しを添付
満了日 契約上の期日(普通は更新期、定期は返還期) 通知期限・承諾要否とセット管理
残存年数 年・月・日で算出 自動計算セルの丸め規則を明記
通知期限 満了前◯か月など契約記載 審査期間を逆算し社内締切を設定

 

【重要ポイント】

  • 数値には根拠と時点を併記→条項番号・写しを保存
  • 残存年数は価格・融資・修繕計画の軸→定点チェック

 

地主連絡と必要な同意事項の整理

基本は「早め・文書・根拠同封」。相続・名義変更・口座変更は通知で足りますが、譲渡・転貸・地上権設定・抵当設定・増改築・建替は承諾が必要なのが一般的(契約条項で確認)。

申請書には、目的・計画(図面・工期・仮設・近隣配慮)・資金計画・保険加入・保証案を添付し、対価性(承諾料・地代改定等)の根拠を路線価・借地権割合・見積・鑑定で裏付け。

 

区分は管理組合の承認経路(様式・理事会/総会決議の要否)を先に確認し、持分に沿って運用。

審査期間・追加資料・条件変更は起こりやすいので、タイムラインと連絡履歴を台帳化し交渉経緯を記録。紛争懸念がある場合は、専門家からの照会状や同席面談も検討します。

 

【手順・ステップ】

  1. 承諾要否の判定→条項・運用履歴・計画内容で判断
  2. 申請書作成→図面・見積・保険・保証・根拠資料を添付
  3. 審査・条件交渉→対価・期限・是正タスクを合意書へ反映

 

同意事項 典型の添付書類
譲渡・転貸 条項写し、買主/賃借人情報、資金計画、同意書案
増改築・建替 図面・工期・仮設・近隣配慮、保険、見積、誓約書
抵当・地上権設定 金融機関稟議資料、評価書、担保設定案、覚書案

 

更新期限の逆算と管理表の運用

遅延は費用増・紛争の火種。逆算管理では満了日から「通知→承諾→更新契約→資金→登記→保険」のマイルストーンを配置し、社内締切と対外締切を分けて設定。

普通借地は更新料・条件変更・地代改定が同時に動くため、資金化・交渉準備を前倒し。定期は返還が基本のため、原状回復・解体・引渡・退去・撤去の発注と資金計画を先行。

区分は修繕周期と残存年数のズレを会計年度で吸収し、総会決議時期と合わせて進めます。

 

【タイムライン(例)】

  1. 満了24〜18か月前→条項再点検、残存年数・通知期限を確定
  2. 満了12か月前→承諾要否の判定、見積・評価書の手配、資金方針
  3. 満了6か月前→承諾申請・条件交渉、更新案・覚書案の文案化
  4. 満了3か月前→合意書締結、資金手当、登記・保険の準備
  5. 満了1か月前→最終確認、精算、更新契約・引渡条件の履行

 

項目 期限目安 備考
通知・承諾 契約所定(例:満了◯か月前) 審査期間を見込み、社内締切は前倒し
資金計画 満了6〜3か月前 更新料・承諾料・測量・解体等を積算
書面・登記 満了3〜1か月前 覚書・更新契約・登記・保険の連携

 

管理表に入れる推奨項目
  • 起算日・満了日・通知期限・残存年数(自動計算)
  • 承諾要否・根拠(条項番号)・見積額・提出先・審査期間

 

借地権の注意点とリスク

リスクは「期間(残存年数)」「承諾要否」「登記・対抗力」「更新・満了の手続」に表れやすい。年数が短いほど承諾条件や費用が厳しくなり、価格・融資年限にも影響。

無断建替・無断増築は解除・損害金の争点となり、建物滅失中は賃借権の対抗特例が使えず第三者対抗に弱くなる点も要注意。普通借地は更新前提でも、未払や違反があると交渉で不利。

定期は満了返還が原則で、満了後の使用は賃料相当損害金の対象となるリスク。境界未確定・越境は承諾や建替・融資稟議を止め、更新・満了解決のタイムラインを圧迫します。

 

【重要ポイント】

  • 年数短縮=価格・融資・承諾条件が厳格化
  • 無断行為→解除・損害・対抗力低下の連鎖に注意
  • 定期=満了返還が基本→出口設計は前広に

 

無断建替えに伴う年数リスク

無断建替・無断増築は契約違反で是正・解除対象になり得ます。とくに建替で建物が一時滅失すると、自己名義の建物登記による対抗特例が使えない期間が生じ、第三者に不利。

承諾なく工事を進めると、更新条件が厳格化し、承諾料・保証金・地代改定が同時要求となる場合も。

 

戸建ては工期中の仮住まい費・地代扱い、区分は規約・工事細則違反の是正コスト、事業用は退去・原状回復の重複コストが負担。

実務は工事前に覚書で承諾条件・地代の扱い・仮設計画を固定し、完了後ただちに建物登記を回復して対抗力を補います。

 

【手順・ステップ】

  1. 条項確認→増改築・建替の承諾要否と提出物の特定
  2. 計画整備→図面・工期・仮設・近隣配慮・保険の添付
  3. 覚書締結→承諾料・地代・保証・違約条項を明文化
  4. 完了後→登記と保険の更新、対抗力の回復

 

リスク 年数への影響・初動
承諾欠如 更新条件が厳化→工事前の覚書で固定
建物滅失 対抗力が低下→登記回復を最短で実行

 

更新期限切れと解除リスク

普通借地は更新前提でも、未払や重大違反があると更新交渉で不利となり、更新料・地代増額・是正期限など厳しめの条件が提示されがち。

手続放置は、別の承諾や測量・是正と連鎖遅延を起こし、満了直前の駆け込み交渉で費用上振れの温床に。

 

定期は返還が基本で、超過使用は賃料相当損害金の対象となり得るため、原状回復・引渡時期・設備撤去の段取りを前倒しで確定します。

相続・売買予定があるなら、満了12か月以上前から年数・承諾・測量是正・資金を一体管理し、買主・金融機関に開示できる管理表(起算日・満了日・通知期限・是正タスク・費用概算)を整備。

 

【タイムライン例(普通借地)】

  1. 満了12か月前→条項再点検・未払是正・更新料見積
  2. 満了6か月前→承諾申請・条件交渉・資金化
  3. 満了3か月前→合意書締結・登記準備・保険更新

 

期限遅延で起きやすいこと
  • 交渉が短期化→条件が貸主優位に傾きやすい
  • 測量・越境是正が未了→契約締結に間に合わない

 

贈与認定・みなし譲渡の注意

親族間の売買・持分移転、承諾料の無償・著しい低額授受、底地と借地の相互調整は、時価との差が大きいと「贈与」や「みなし譲渡」の評価リスク。残存年数が短いほど価格は下振れしやすく、形式的な安価取引は疑義を招く恐れ。

評価は自用地価格(路線価年度・補正明細)×借地権割合、契約上の制限、近傍事例、第三者評価(鑑定)等で根拠を組み合わせ、取引価額・承諾料の相当性を説明できるよう整備します。

 

【概算イメージ(前提を明示)】
前提:基礎値1,800万円、残存9年→年数補正0.6、是正80万円
目安価額=1,800×0.6−0.08=1,000万円弱

大幅乖離はリスクが高まるため、根拠(路線価年度・補正・見積・鑑定)と支払実績(通帳・領収)を保存。個別性が大きいため最終判断は専門家へ。

 

【重要ポイント】

  • 形式より実質→時価根拠と支払実績の整備
  • 年数短縮=価格下振れ→不自然な乖離は避ける

 

境界・越境が年数計画へ与える影響

境界未確定・越境(枝・庇・外壁・配管等)は、建替承諾・更新合意・売買・融資を止める典型要因。

測量〜隣接立会〜境界確認書〜必要に応じ地積更正登記まで、都市部でも1〜3か月(状況により長期化)を要し、年数の逆算管理を圧迫。

越境の是正は、撤去・補修・使用貸借・地役権設定などで費用・時間が異なり、更新・満了解決とぶつかりやすい。区分は共用・専有・敷地の責任分界が絡み、総会決議時期も勘案が必要。

 

【手順・ステップ】

  1. 資料収集→公図・測量図・現況写真で疑義を洗出し
  2. 立会測量→境界確認書→必要時は更正登記
  3. 越境是正→撤去・補修・地役権設定から選択し契約化

 

項目 年数への影響 初動と対策
境界未確定 承諾・更新・建替が遅延 早期測量→確認書→必要なら更正登記
軽微な越境 承諾条件が厳化 撤去・補修の期限設定→写真で証跡化
構造躯体越境 工期・費用が大幅増 地役権設定や等価撤去→合意書で将来条件を固定

 

年数計画へ組み込むコツ
  • 測量・是正の所要期間を前倒し計上→満了・更新と同期
  • 是正費は承諾料・更新料と合わせて資金化→一括交渉で効率化

 

まとめ

借地権の年数は、①類型(普通か定期)②契約条項(更新・承諾・費用)③残存年数の三点で整理すると判断が速くなります。初回30年の目安と更新料の有無を契約で確認し、路線価と借地権割合で価格影響を押さえる。

残存年数は逆算表で管理し、承諾が要る手続は根拠と費用を事前提示すると交渉が円滑です。個別の可否・金額・期限は契約・地域運用で変わるため、一次情報の確認と専門家への早期相談を推奨します。