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借地権の旧法とは?初心者でもわかる9つのポイントと注意点を徹底解説

旧法の借地(旧借地法ベース)は、期間設定・更新の考え方や建替え時の扱い、承諾料の位置付けが、現行の借地借家法と異なります。

本稿では〈適用の見極め〉〈契約書の確認項目〉〈更新・建替え〉〈譲渡・名義〉〈費用相場〉〈相続・登記〉を9項目で横断整理。初学者でも短時間で重要点をつかみ、手続や交渉での取りこぼしを減らすことを狙います。

 

旧法の定義と適用判定の要点/基礎

旧法借地とは、建物所有を目的として土地を借りる契約のうち、旧借地法に基づき成立し、経過規定により現在も継続しているタイプを指します。

適用の第一確認は「締結日」と「条項」。一般に、借地借家法の施行前に成立し、その後も合意更新または法定更新で続いている契約は旧法の枠組みが維持されます。

旧法では、堅固建物か非堅固建物かによって存続期間・更新期間の目安が異なり、再築(建替え)に関する扱いにも特有のルールがあります。

 

実務では、戸建(木造)・区分マンション(RC)・オフィス(SRC)など用途・構造により、承諾要否や想定コストが変わりやすく、売買・承継・融資の各場面で「旧法/新法」の見分けは評価や審査に直結します。

まずは登記事項証明書と賃貸借(または地上権)契約書を付き合わせ、適用法令、期間・更新、再築・譲渡承諾の条項を俯瞰し、全体像を把握することが出発点です。

 

【重要ポイント】

  • まず契約時期を確認→旧法か新法かの切り分けを先に決める
  • 構造区分(木造/RC)で期間の目安が変化
  • 更新・再築・譲渡は条項と通知・合意の履歴で判断

 

旧法適用の見分け方と判定基準の基礎

迷わないために、手順化が有効です。①契約書の作成日と「適用法令」の記載を確認、②更新があれば合意更新か法定更新か、その条項内容を読み取る、③再築(建替え)の有無と当時の通知・異議の有無を追う——の流れで整理します。

原契約が旧法期に成立し、新法への切替特約がなければ、旧法の扱いが継続しているのが一般的です。

 

売買の局面では、融資審査や担保方針に影響するため、重要事項説明書・契約・承諾書・更新合意・再築関連の書面を一括で点検します。

戸建の居住用と、区分マンション敷地のような共同利用地では、確認すべき資料と説明の粒度が異なる点にも注意します。

 

【手順・ステップ】

  1. 契約日・適用法令・期間条項の確認
  2. 更新の方式(合意/法定)と内容の特定
  3. 再築の有無・通知・異議の有無を確認
  4. 譲渡・増改築・転貸の承諾履歴を収集

 

新法との主な違いと注意点早わかり

借地借家法(新法)は、堅固/非堅固による期間区分を廃止し、普通借地の期間・更新をシンプルに整えました。旧法は構造により初回・更新の期間目安が異なり、再築に伴う取り扱いも条文運用が複線的です。

さらに新法では、期間満了で更新しない定期借地が創設され、住居・事業での使い分けが進みました。

 

実務では、現契約が旧法継続か、新法(普通/定期)へ切替済みかで、出口(売却・承継)や担保評価の見立てが変わります。

木造戸建の旧法契約は更新・増改築・再築の承諾条件が資金計画へ波及し、RCマンションの底地では管理組合・区分所有者への説明資料が求められがちです。まずは法体系の確定と、更新時の切替特約の有無を確認しましょう。

 

見落としがちな注意点
  • 合意更新の条項で新法へ切替済みのことがある
  • 再築・増改築の履歴が期間計算に影響する場合がある
  • 底地売買で承諾料・地代改定条項の確認漏れが起きやすい

 

堅固・非堅固の区分と考え方の要点

旧法では、耐火性の高い構造(RC・SRC・れんが・石造等)か、木造等の非耐火構造かで、期間・更新の目安が違います。契約書に「堅固」「非堅固」の表現や例示が載っていることが多く、当時の技術水準・用語に沿って読み解くのが原則です。

準耐火木造やツーバイフォーなど中間的な構造は、契約文言と締結時点の認識に基づいて個別判断します。

 

建物が滅失して再築した場合は、通知や異議の有無が以後の期間取り扱いに関わるため、建替時期の書面を追跡します。

戸建(木造)は非堅固が起点、区分マンション・事務所(RC・SRC)は堅固が起点になるのが一般的です。

こうした前提は、更新時期の見立て、承諾要否、承諾・更新料の交渉幅、売買時の利回り評価にも波及します。

 

【重要ポイント】

  • まず契約文言を優先→当時の記載と整合を確認
  • 木造=非堅固/RC・SRC=堅固が典型的な出発点
  • 再築の通知・異議の有無は期間判断に影響

 

契約書で必ず確認すべき重要条項一覧

成果を左右するのは「書面の読み込み」です。適用法令、期間・更新、再築・増改築、譲渡・転貸、地代改定、更新料、承諾料、名義書換料の有無と文言を確認します。

戸建や土地活用では増改築の承諾条件、区分マンションの底地では管理組合への説明や地代改定基準が交渉カードになります。

 

相続では、承継通知・必要書類、固定資産税評価や路線価(評価時点)を早期に揃えるとスムーズです。

金融機関の評価は、更新時期・改定条項・承諾取得の見込みを重視する傾向があり、出口戦略(残存期間)とセットで確認します。

 

項目 内容
適用法令 旧法継続か、新法切替特約の有無を確認
期間・更新 初回期間、更新方式(合意/法定)、次回満了日
再築・増改築 承諾要否、通知手続、異議の可否、履歴
譲渡・転貸 承諾条件、承諾料、名義書換料の扱い
地代・更新料 改定基準・時期、算定方法、実績の履歴

 

チェックの順番(実務のコツ)
  • 契約日→適用法令→期間→更新方式の順で確定
  • 再築・増改築・譲渡の承諾条項と履歴を確認
  • 地代・更新料の基準と改定履歴を整理

 

期間・更新・建替えの枠組み/制度

旧法の肝は「構造と期間」。堅固建物は初回60年(期間定めなし)または30年以上(期間定めあり)が起点で、更新後は30年が目安。非堅固は初回30年(定めなし)または20年以上(定めあり)、更新後は20年が目安とされます。

更新は、正当事由がなければ妨げにくく、法定更新の回数に上限はありません。再築(建替え)は、通知・異議・承諾の扱いによって以後の期間取り扱いが左右され、満了時点に建物がない場合は法定更新の適用に影響します。

戸建(木造)・区分マンション底地(RC)・事業用(店舗・事務所)など、物件により更新の想定・承諾要否・担保評価の見方が変わるため、「構造→期間条項→更新・再築履歴→地代・更新料の履歴」を時系列に並べておくと判断が安定します。

 

観点 旧法での一般的な扱い
初回期間 堅固:60年(定めなし)/30年以上(定めあり)/非堅固:30年(定めなし)/20年以上(定めあり)
更新期間 堅固:30年目安/非堅固:20年目安(条項・合意で調整あり)
更新の性質 正当事由が必要。法定更新の回数制限なし
再築の影響 通知・異議・承諾の有無が以後の期間取扱いに影響
滅失時の扱い 満了時に建物がないと法定更新に影響。早期の再築・手続が鍵

 

初回期間と更新サイクルの全体像

堅固・非堅固で期間目安が変わる点が旧法の特徴です。例として、区分マンション(堅固)の底地は初回60年(定めなし)または30年以上(定めあり)で、更新後30年が一般的な目安。

戸建(非堅固)は初回30年(定めなし)または20年以上(定めあり)で、更新後20年が目安です。

 

ただし、契約条項・更新合意・地代改定の履歴で個別調整されるのが普通で、「目安=自動適用」ではありません。残存期間は融資期間や金利、評価に直結し、相続・投資では出口戦略に関わります。

したがって、構造区分、原契約の期間条項、更新の形式(合意/法定)、次回満了予定日の四点を先に確定し、資金計画へ反映させましょう。

 

期間を読むコツ(実務順)
  • 構造(堅固/非堅固)を先に確定→目安期間の起点に
  • 原契約の期間・更新方式・次回満了日を特定
  • 合意書・通知・改定履歴を時系列で整理し、判断材料に

 

更新拒絶と正当事由の基本理解

更新の拒絶には「正当事由」が要件です。土地の必要性、利用状況、経過、代替条件や立退料(財産上の給付)などを総合考慮します。

居住用戸建のように占有の継続性が強い場合は、拒絶のハードルが高くなりがちです。事業用で高度利用が計画されるときは、立退料を含む調整で合意するケースもあります。

大切なのは、満了前からの協議・通知を適切な様式で進め、双方の事情と代替条件を具体化しておくこと。期日管理と書面の整え方が、更新継続・阻止のいずれにおいても勝負所になります。

 

【重要ポイント】

  • 正当事由は総合判断→単独要素で結論に至らない
  • 立退料の提示は考慮要素→根拠の作成が鍵
  • 期日管理(満了半年前目安)と書面化で紛争予防

 

建替え・再築の承諾条件と注意点

再築(建替え)は、通知・異議・承諾の扱いで、その後の期間運用が変わり得ます。計画の概要(構造・規模・工期・敷地利用の変化)を明記した書面で事前に通知し、承諾または異議なしを確保するのが安全です。

異議がなければ以後の期間延長が認められた裁判例もある一方、手順不備があると更新・期間計算で不利になり得ます。

 

戸建の増改築、RCの大規模修繕・用途変更に近い再築などは、どこまでが「建替え」に当たるかの線引きも重要。

承諾料は地域・事情で幅が大きく、設計変更や工期遅延に伴う追加協議も見込みます。承諾条件案や代替条件(地代改定・工期中の使用)を用意し、合意書へ落とし込みましょう。

 

ありがちなリスク
  • 口頭の「異議なし」で進行→後日争いに発展しやすい
  • 用途・規模変更が無承諾の増改築扱いに→承諾範囲の明確化
  • 通知の遅れで満了期と競合→スケジュールの逆算必須

 

建物滅失時の扱いと法定更新の可否

満了時点に建物が現存することが、更新請求の前提と整理されてきました。滅失したまま満了を迎えると、法定更新の適用が制限され、異議により更新が阻止され得ます。

一方、満了前に再築し、遅滞なく異議が出なかった場合に以後の更新が認められた例もあります。滅失後は再築計画・仮設・安全管理の計画を速やかに提示し、満了前に建物の存在を回復(最低でも計画合意)させるのが基本戦略。

 

戸建の火災・解体、店舗ビルの更地化を伴う建替えでは、保険・仮設・再築工程を共有し、承諾と近隣調整を先行させます。

売買・相続では、滅失の有無・再築進捗が評価・融資・引渡条件に直結するため、重説・合意書・保険書類の整備が不可欠です。

 

【手順・ステップ】

  1. 滅失原因・時期・保険の有無を確定し記録化
  2. 再築計画(構造・規模・工期)と承諾要否を整理し通知
  3. 満了前に建物の存在を回復(少なくとも計画合意)してリスク低減

 

譲渡・名義変更・承諾取得の流れ/手順

引継ぎ方法で手続は変わります。まず、地上権(物権)か賃借権(債権)かを特定し、譲渡・転貸・名義変更・承諾料・書換料・違約条項など契約の実務条項を確認。売買・相続・贈与・事業譲渡ごとに必要書類を揃えます。

戸建売買は、買主の融資内諾前に承諾取得計画を立てるのが安全。区分マンション底地は、管理組合説明や地代口座変更も同時に進めます。

 

相続では、承継通知・名義書換、契約書写しの提出が求められやすく、地代口座・連絡先の一本化が実務を左右します。

投資・賃貸運用は、更新時期・地代改定・滞納の有無を同時確認し、承諾交渉と引渡条件(停止条件付・同時履行)を整合させます。

 

【重要ポイント】

  • 権利種別と条項を先に確定→承諾要否・費用論点を早期把握
  • 取引形態ごとに必要書類をチェックリスト化
  • 金融機関・管理会社・行政手続を並行処理で遅延回避

 

譲渡可否の判断と承諾取得の流れ

賃借権の譲渡・転貸は原則として承諾が必要、無断は解除リスク。地上権は原則譲渡自由ですが、契約で制限されることもあります。

売買契約は、承諾取得を停止条件にするか、承諾前提で締結して不成立時の解除条項を置くかを選択し、融資スケジュールと整合させます。

 

戸建売買では、重説に承諾要否・想定費用・期限を明記し、承諾申請書・売買契約写し・身分証・地代口座情報をまとめて提出すると効率的です。

相続・贈与は、承継通知と名義変更申請を同時化して、請求先の混乱を避けます。

 

【手順・ステップ】

  1. 条項確認→譲渡・転貸・名義変更・承諾料・違約の条文を特定
  2. 承諾要否を判定(賃借権は原則要、地上権は契約次第)
  3. 停止条件の設計(承諾取得/融資内諾)と期日管理
  4. 承諾申請→回答期限・条件提示の調整→合意書化

 

つまずきやすい論点
  • 承諾前の売買契約→解除・違約のリスク
  • 口頭合意のみ→後日の費用争いに発展→書面で固定
  • 更新期・滞納の見落とし→承諾拒否・条件加重の要因

 

名義変更手続と書換料の考え方基礎

名義変更は、借地人・地上権者の表示を新所有者へ切替える手続。きっかけは譲渡・相続・法人再編などです。必要書類は、本人確認、移転根拠(売買契約、遺産分割協議書等)、地代口座変更届、連絡先届など。

書換料は法定一律ではなく、契約・慣行・個別事情で協議して決まります。地域により、譲渡承諾料と名義書換料を分ける・一括で扱うなど運用が異なります。

居住用の親族内は抑制的、事業用や高収益は相応の金額が議論されがち。根拠と内訳(事務負担・調査・同意取得のコスト)を明確化し、金額・時期・不成立時の扱い(預り金返還等)を合意書に落とし込むのが紛争予防の近道です。

 

【重要ポイント】

  • 名義変更=表示の切替、譲渡承諾=譲渡の可否→用語を混同しない
  • 書換料は協議事項→一律基準はない
  • 金額・時期・不成立時の返還条件は合意書で明文化

 

場面 必要書類(例)
売買の名義変更 売買契約書、承諾書(必要時)、登記事項証明書、地代口座変更届、本人確認
相続の承継 戸籍一式、遺産分割協議書または遺言、身分証、相続登記後の登記事項証明書
法人再編・商号変更 合併契約・効力発生日資料、商業登記簿、代表者印証、通知書一式

 

地上権と賃借権の登記の違い要点

地上権は物権で権利そのものを登記して公示でき、譲渡・抵当設定も行いやすく対抗力が強いのが特徴。

賃借権は債権で第三者対抗に弱いのが原則ですが、借地は建物登記があれば賃借権を第三者へ対抗可能という特則があります。

 

賃借権そのものの登記も理論上はあり得ますが、貸主同意を要し普及度は高くありません。融資・担保の観点では、地上権は権利の把握が容易で、賃借権は契約条件(期間・更新・地代・解除事由)の影響が大きい点を押さえます。

売買・相続では、登記(権利部)・建物登記・賃貸借契約・合意書を突合し、対抗要件の充足を必ず点検します。

 

項目 地上権 賃借権(借地)
権利性質 物権(譲渡・担保設定が容易) 債権(契約条項の影響が大)
登記の扱い 地上権そのものを登記して公示 原則は建物登記で対抗/賃借権登記は例外的
譲渡・転貸 契約制限がなければ原則自由 原則、貸主承諾が必要(無断は解除リスク)
担保評価 期間・地代等を勘案し設定しやすい 条件・更新・滞納の有無で評価が変動

 

実務での見分けのコツ
  • 登記簿(権利部)に地上権の記載→物権型
  • 建物登記+賃借条項→第三者対抗の充足を点検
  • 融資方針を事前確認→担保可否や期間の参考に

 

測量・境界・越境リスクの確認手順

承継・売買前に、境界未確定や越境(庇・配管・擁壁等)を確認しておくと、承諾取得や地代見直しで有利です。

公図・地積測量図・地番・地目を収集し、現況測量で敷地と隣接物の関係を把握。越境が疑われる場合は所有者・管理者を特定し、是正か使用承諾(覚書)かを選択します。

戸建は雨樋・カーポート、マンション底地は配管・桝・看板基礎の越境が典型。承諾取得前に「現況確認書」「越境是正合意書(期限・費用負担)」、現況図・求積図・写真台帳を整えると交渉が円滑です。

 

【手順・ステップ】

  1. 資料収集→公図・測量図・登記事項・契約・図面類
  2. 現地確認→現況測量・高低差・工作物・配管・擁壁
  3. 越境判定→是正(撤去・移設)または使用承諾(期間・対価)
  4. 書面整備→覚書・合意書・写真台帳・境界確認書

 

見落とし注意
  • 私設インフラ(井戸・桝・共同配管)の帰属不明
  • 是正期限の未設定→引渡遅延・費用紛争
  • 高低差・擁壁の責任分界の未合意

 

地代・更新料・承諾料の相場観/相場

旧法借地では、地代改定、更新料、各種承諾料(譲渡・建替え・増改築等)が実務の主要テーマです。最終決定は契約と合意ですが、議論の下敷きになる算定の「型」があります。

地代は、指数(物価・地価)連動、事例比較、利回り(更地価格×地代利回り−必要経費)、税額倍率(固定資産税等×倍率)などで整合を取ります。

 

更新料は法定一律がなく、過去の合意・地域慣行・残存期間・改定状況で幅が出ます。承諾料は、借地人の利益増と地主の負担増のバランスで設計し、行為(譲渡・建替え・用途変更等)ごとに根拠と金額ロジックを明示して合意へ落とし込むのが実務的です。

用途・構造で期待収益や金融機関の見方が変わるため、評価書・指標・図面・写真を用意し、数値の出所と時点をそろえておくと交渉が安定します。

 

交渉を有利にする資料の揃え方
  • 契約・合意・改定履歴(年・内容・金額)
  • 評価指標(路線価の年度、公示地価の公表日、固定資産税の年度)
  • 近隣事例(地代・承諾料)と当事者事情の整理

 

地代見直しと改定時期の目安

地代は、経済事情や近隣相場との乖離が大きいときに見直しを検討します。①スライド法(CPIや地価指数で調整)、②事例比較法(同用途の実勢へ平仄合わせ)、③利回り法(更地価格×地代利回り−経費)、④税額倍率法(固定資産税・都市計画税×倍率)を使い分けます。

改定時期は、契約で定めがあればそれに従い、定めがなければ乖離の顕著化が目安。戸建居住用は税額倍率やスライドが、事業・底地は利回りや事例比較が説明しやすい傾向です。

 

【重要ポイント】

  • 指数名・公表日・年度など出所と時点を明記
  • 前回改定からの乖離率を可視化(表・グラフ)
  • 改定幅は段階案(即時+経過措置)もセットで提示

 

算定型 使いどころ
スライド法 長期継続契約の調整に。対象期間の明記が鍵
事例比較法 近隣・同用途のレンジへ収斂させたい場合
利回り法 事業用・底地の説明で有効
税額倍率法 居住用・小規模地で簡便に概算

 

更新料の考え方と相場目安の概算幅

更新料は、契約条項・過去の合意・地域慣行・当事者事情で決まります。試算用の「型」として、〈借地権価格×α〉、〈更地価格×β〉、〈地代×一定月数〉が用いられます。

仮定:借地権価格2,000万円、更地4,000万円、地代3万円/月なら、〈地代×6か月〉=18万円、〈借地×5%〉=100万円、〈更地×3%〉=120万円など幅を掴めます。採用式は残存期間、履歴、用途で調整します。

 

更新料で揉めやすい点
  • 契約に更新料規定なし→過去の領収・合意・慣行が鍵
  • 根拠の曖昧さ→複数算式を併記し比較表で透明化
  • 改定未実施で更新料のみ→改定とセットで再設計

 

譲渡承諾料と増改築料の目安相場

承諾料は、借地人の利益増(転売益・賃料増・建物価値上昇)と地主の負担・リスク(権利関係の複雑化・将来の明渡困難)を踏まえて協議します。

仮定の「型」として、譲渡承諾=〈借地権価格×γ〉、建替承諾=〈更地価格×δ〉、条件変更承諾=〈更地価格×ε〉を置き、目安はγ=10%、δ=3〜5%、用途・構造の大幅変更はε=10%程度とする例があります。

更地5,000万円・借地2,500万円なら、譲渡≈250万円、建替≈150〜250万円、条件変更≈500万円のレンジ感。親族内承継・居住継続は減額、規模拡大・用途転換は増額方向に働きやすい傾向です。

 

【重要ポイント】

  • 評価対象(どの利益・負担)と係数を文書で明確化
  • 親族内・居住継続=低減/事業用・規模拡大=増額の傾向
  • 金額・時期・不成立時の扱い・地代改定の有無を合意書に明記

 

承諾種別 算定の型(試算用の仮定)
譲渡承諾 借地権価格×γ(例:10%)
建替承諾 更地価格×δ(例:3〜5%)
条件変更承諾 更地価格×ε(例:10%、用途変更等)

 

鑑定評価の使い方と交渉材料の整理

金額の説得力を高めるには第三者の裏付けが有効です。賃料改定は「継続賃料の鑑定」を使い、スライド・差額配分・利回り・事例比較を組み合わせてレンジを提示。

承諾料・更新料は、更地価格(取引事例・収益還元・路線価倍率等)、借地権価格(借地権割合や実勢)を根拠として、誰が・いつ・どの資料で算出したかを明示します。

 

【手順・ステップ】

  1. 評価の種類を決定(継続賃料/更地/借地権)
  2. 指標と時点を確定(路線価年度、公示地価公表日、固定資産税年度等)
  3. 評価書の要約(前提・式・レンジ・感応度)を作成し交渉資料化

 

数字の透明性を上げる書き方
  • 前提・データ源・時点を併記(例:路線価◯年、CPI◯年◯月)
  • 単一値ではなく“レンジ”提示+分割払・経過措置の代替案
  • 比較表・感応度表で意思決定を可視化

 

相続・税金・登記の落とし穴/注意点

相続・税務・登記は相互に影響します。相続は「承諾不要でも通知は必要」が基本で、権利種別(賃借・地上)や、名義書換・承諾料の定めの有無で手続が変わります。

登記では、相続による所有権移転登記の申請期限(原則3年以内)に留意。税務は、自用地価額(路線価方式/倍率方式)と借地権割合の取り違いが評価・分割に直結します。

 

譲渡を伴う場合は、譲渡所得や登録免許税の区分(相続・売買・地上権設定等)で税率が変動し、居住用特例の可否も個別判断。

戸建は親族内承継で費用抑制しやすく、区分底地・事業用は承諾条件・承諾料・地代改定が焦点となりがちです。相続関係説明図、契約、履歴、路線価等の時点を合わせ、関係者の認識を統一することで遅延と紛争を防げます。

 

落とし穴回避ポイント
  • 「承諾不要=連絡不要」ではない→承継通知・口座変更は速やかに
  • 評価は「路線価の年度」「借地権割合」を明記し時点統一
  • 登録免許税・譲渡所得税は取引類型で税率が変わる→個別確認

 

相続時の承継手続と必要書類一覧

相続では、承諾は不要でも実務上は承継通知・名義書換(地代口座・連絡先変更)・契約書写しの提出を求められることが多いです。まず相続人確定(戸籍一式)と遺言の有無を確認。

遺産分割が整えば、相続登記準備と並行して、賃貸借(または地上権)契約・更新合意・地代改定履歴を整理し、通知に添付します。

 

戸建は固定資産税納税通知書の宛名・送付先変更、区分底地は管理組合への届出・規約確認が加わります。

相続登記は「相続開始を知った日から原則3年以内」の申請が必要なため、司法書士・税理士と役割分担して遅延を防ぎます。

 

項目 内容
身分関係 戸籍・除籍・改製原戸籍、相続関係説明図
権利・契約 賃貸借/地上権契約、更新合意、地代改定履歴、承諾書写し
財産・評価 登記事項、公図・地積測量図、固定資産税納税通知書(年度)
相続手続 遺言(検認要否)、遺産分割協議書、相続登記申請
名義関係 地代口座変更、連絡先届、管理組合への届出(該当時)

 

【手順・ステップ】

  1. 相続人の確定→戸籍収集・関係説明図作成
  2. 契約・登記の現況把握→更新時期・改定履歴・承諾有無
  3. 遺産分割成立→相続登記準備と承継通知
  4. 口座・連絡先・管理関係の変更→証跡(受領印・返信)を保存

 

相続税評価と借地権割合の確認要点

相続税評価は、自用地価額×借地権割合で借地権を、同価額×(1−借地権割合)で底地を把握します。

自用地価額は、路線価方式(路線価〔年度明記〕×地積〔㎡〕×補正)または倍率方式(固定資産税評価額×倍率〔年度明記〕)。借地権割合は地域ごとに設定(例:30〜90%)、底地は1−借地権割合。

区分底地など複層的な権利は、敷地権の持分と規約の制約も確認します。数字は出所・時点の統一が原則で、路線価は該当年度、固定資産税は当年度の通知書の数値を用います。

 

【計算例(仮定・単位併記)】
自用地価額=路線価30万円/㎡(当年度)×100㎡=3,000万円。
借地権割合60%→借地権評価1,800万円。底地権割合40%→底地評価1,200万円。

 

見落とし注意
  • 路線価年度の取り違い→評価の不一致
  • 割合の誤読→底地との按分ミス
  • 区分の敷地利用権→持分・規約の確認漏れ

 

譲渡所得税と登録免許税の基礎知識

借地権の譲渡(名義移転)は、譲渡所得の対象で「譲渡価額−取得費−譲渡費用−特別控除等」で計算。所有期間5年超は長期、5年以下は短期の区分が一般的で、税率体系が異なります。

登録免許税は登記の種類で変わり、相続の所有権移転は0.4%、売買の所有権移転は2.0%(軽減の有無は要確認)、地上権設定は2.0%、賃借権設定は0.2%が目安です(いずれも記事時点の一般的整理)。

名義書換のみで登記がなければ登録免許税は不要ですが、契約・承諾料・実費は別途必要です。

 

【重要ポイント】

  • 所有期間の区分を確認→取得日の証憑を確保
  • 相続0.4%/売買2.0%/地上権2.0%/賃借権0.2%(一般的目安)
  • 居住用特例は利用実態と期間要件で可否を判断

 

区分 譲渡所得税の取扱い(一般的) 登録免許税(一般的)
長期(5年超) 長期分離課税(体系は別途確認)
短期(5年以下) 短期分離課税(体系は別途確認)
相続移転 所有権移転0.4%
売買移転 所有権移転2.0%(軽減の有無要確認)
地上権設定 2.0%
賃借権設定 0.2%

 

紛争予防のチェックポイント一覧

トラブルは「時点のズレ」と「用語・役割の混同」から生じやすいです。評価で使った路線価・固定資産税の年度、更新・改定の履歴年と金額を1枚にまとめ、数値の整合を取ります。

次に、権利種別(賃借/地上)と対抗要件(建物登記・地上権登記)、承諾履歴を一覧化。相続登記の期限(原則3年)や、名義書換・口座変更の完了証跡(受領印・返信書面)を残すと責任分界が明確です。

戸建は境界・越境の是正合意、区分底地は管理組合の届出・規約確認が漏れやすいので注意。承諾料・更新料は算定根拠と代替案(分割・経過措置)を併記し、金額・時期・不成立時の扱いまで合意書へ。

 

チェックリスト(保存版)
  • 時点統一→路線価(年度)・固定資産税(年度)・改定履歴(年)
  • 権利・対抗要件→賃借/地上の別、登記の有無、建物現況
  • 承諾関係→譲渡・増改築・建替えの履歴と根拠
  • 期限管理→相続登記(原則3年)、更新期、支払期日
  • 証跡保存→受領印、返信書面、写真台帳、メール記録

 

まとめ

旧法借地は「適用判定→期間・更新→建替え→譲渡・名義→費用相場→相続・登記」の順に押さえると迷いません。

まず契約・登記・地代改定履歴を確認し、承諾が要る行為と費用レンジを先に整理。更新拒絶の考え方や評価・税務の基礎を掴んでおけば、交渉の見通しが立ち、手続のリスクを大きく抑えられます。