容積率オーバーになっている物件について、「そもそも売れるのか」「どの程度価格が下がるのか」「買主にどこまで伝えるべきなのか」と不安を抱えている方は多いと思います。
この記事では、容積率の基本的な考え方、どのような状態が容積率オーバーに当たるのか、売却への具体的な影響、事前にチェックしたい資料、現実的な売却ルートと注意したいリスクまでを、流れに沿って整理します。あくまで一般的な考え方をまとめた内容ですので、最終的な判断や個別の対応は、ご自身の事情に応じて専門家の助言も踏まえて検討していきましょう。
容積率オーバー物件の基礎知識
容積率オーバーの物件を売却しようとするときは、「容積率とは何か」「どの状態が容積率オーバーになるのか」「法的にどう扱われるのか」を一度整理しておくことが出発点になります。
容積率は、建築基準法や都市計画に基づき、主に用途地域や前面道路の幅などから上限が決められている指標です。
この上限を超えている建物は、現在の基準から見ると「建てすぎ」の状態と評価され、将来の建て替え・増改築や住宅ローン審査に影響が出る可能性があります。
もっとも、「容積率オーバー」といっても、最初から基準を満たしていなかった違反建築なのか、建築当時は合法だったが後の規制変更で結果としてオーバーになったのかによって、意味合いは大きく変わります。
前者は法令違反の色合いが強く、後者は「既存不適格」として扱われることが多く、売却のしやすさやリスクの大きさも違ってきます。
自分の物件がどのパターンに近いのかを、容積率の計算と図面・役所での確認を通じて把握することが重要です。
- 容積率の定義と計算の考え方を押さえる
- どこからが「容積率オーバー」とされるのかを確認する
- 既存不適格と、建築当初からの違反建築を区別して考える
- 建ぺい率との違いも合わせて理解しておく
- 「現在の法令」と「建築当時の法令」を分けて考える意識を持つ
- 土地面積と建物規模を、感覚ではなく数値で把握したうえで判断する
容積率の仕組みと計算の基本
容積率は、「敷地面積に対してどれだけの延べ床面積が建っているか」を示す割合です。建築基準法や都市計画で用途地域ごとなどに上限値(例:200%、300%など)が定められており、原則として「延べ床面積 ÷ 敷地面積 × 100(%)」で計算します。
延べ床面積には各階の床面積の合計が含まれますが、バルコニーや車庫の一部など、条件により算入しない部分もあります。
容積率を設ける目的は、街全体の建物ボリュームをコントロールし、採光・通風や道路の混雑、インフラ負担などが過度にならないようにするためです。
ざっくりとしたイメージとしては、指定容積率200%なら「敷地と同じ面積の2階建て程度」、300%なら「3階建て程度」といったように、そのエリアで一般的に想定される規模が示されることになります。
【計算のイメージ例】
敷地面積:100㎡
建物の各階床面積:1階70㎡、2階70㎡、3階40㎡(合計180㎡)
→ 容積率=180㎡ ÷ 100㎡ × 100=180%
このとき指定容積率が200%であれば、容積率180%は上限内ですが、指定容積率が160%であれば、現況は容積率オーバーということになります。
敷地面積と建物の延べ床面積の両方を押さえなければ判断できないため、売却を検討する際には、登記情報や図面を不動産会社・建築士と一緒に確認しながら計算してもらうと安心です。
- 敷地面積は登記上の地積と実測のどちらを使うかを確認する
- 延べ床面積に含める/含めない部分(車庫・バルコニーなど)の扱いを確認する
容積率オーバーに該当するケース
容積率オーバーかどうかは、「現行法で定められた指定容積率」と「実際の延べ床面積」の関係で判断します。代表的なパターンは次のとおりです。
- 建築当初から基準を超えているケース
建築確認を受けていない、または確認どおりに建てていないなどの理由により、建てた当時から容積率基準を守れていないパターンです。この場合、現在の基準から見ても、当初から違反建築に当たる可能性があります。 - 建築当時は基準内だったが、後から容積率が引き下げられたケース
用途地域の変更や都市計画の見直しで指定容積率が下がり、建築当時は適法だった建物が、結果として容積率オーバーとなっているパターンです。こうしたケースは「既存不適格建築物」として整理されることが多くなります。
さらに、当初は基準内だった建物でも、その後の増築を繰り返した結果、延べ床面積が増え続け、現行の容積率上限を超えてしまう場合もあります。
特に、比較的古い木造住宅などで、1階部分の増築を何度か行った結果、いつの間にか容積率オーバーになっていた、というケースは珍しくありません。
| パターン | 概要 |
|---|---|
| 当初からオーバー | 建築確認を受けていない、または確認図面と異なる規模で建てたなど、建築当時から容積率基準に合致していないケース。 |
| 規制変更によるオーバー | 用途地域や都市計画の変更により指定容積率が下がり、建築当時は基準内だった建物が、結果として容積率オーバーとなったケース。 |
| 増築によるオーバー | 後から増築を重ねたことで延べ床面積が増え、現在の指定容積率を超えてしまっているケース。 |
- 「古い建物だからきっとオーバーしている」と一律に決めつけてしまう
- 一部の増築部分だけを見て判断し、建物全体の延べ床面積を確認していない
既存不適格と違反建築物の違い
容積率オーバーの物件を考えるうえで押さえておきたいのが、「既存不適格建築物」と「違反建築物」の違いです。
どちらも現在の基準から見ると法令に適合していない点は同じですが、成り立ちと法的評価が異なります。
- 既存不適格建築物
建築当時は建築基準法などのルールに適合していたものの、その後の法改正や都市計画の変更により、今の基準には合わなくなってしまった建物です。容積率・高さ制限・用途地域の変更などが理由になることが多く、「後からルールが変わった結果、現在の基準ではオーバーしている」という位置づけです。 - 違反建築物
建築当初から建築基準法などに適合していない建物を指します。建築確認を受けていない、確認時の図面と違う規模で建ててしまった、増築時に確認を受けていないなどのケースが該当します。
既存不適格建築物の場合、建築当時は適法であった経緯から、通常は直ちに是正や取り壊しを求められるわけではなく、一定の条件のもとでそのまま使用し続けることも認められます。
ただし、建て替えや大規模なリフォームを行う際には、現行基準に合わせる必要があるため、同規模の建物を再建できない可能性があります。
これに対して、明確な違反建築物は、行政から是正指導・使用制限などを受けるリスクが高く、住宅ローンの審査でも厳しい目で見られがちです。
売買の場面でも、買主への情報提供や価格設定が難しくなり、「価格が大きく下がる」「そもそも買い手が集まりにくい」といった影響が出ることが多い点に注意が必要です。
- 建築当時に建築確認を受けているか、確認済証が残っているかを確認する
- 確認時の図面と現況の建物に大きな違い(増築部分など)がないかをチェックする
建ぺい率オーバーとの違いの確認
容積率とあわせてよく話題に上がるのが「建ぺい率」です。どちらも「土地に対する建物の大きさ」に関わる指標ですが、見ているポイントが異なります。
容積率が「敷地面積に対する延べ床面積の割合(建物全体のボリューム)」を示すのに対し、建ぺい率は「敷地面積に対する建築面積(建物が地面を覆う部分)の割合(建て込みの度合い)」を示します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 容積率 | 敷地面積に対する延べ床面積の割合。建物の高さ・階数を含めた「ボリューム」を規制する。 |
| 建ぺい率 | 敷地面積に対する建築面積の割合。建物が土地をどの程度覆っているか(密度)を規制する。 |
| 主な影響 | 容積率オーバー:延べ床面積・階数・高さの制約に関わる/建ぺい率オーバー:建物をどこまで敷地いっぱいに建てられるかに関わる。 |
例えば、敷地100㎡に建築面積70㎡・延べ床140㎡の2階建て住宅を建てた場合、建ぺい率は70%、容積率は140%です。
指定建ぺい率60%・指定容積率200%なら、この建物は「建ぺい率オーバーだが容積率は基準内」という状態になります。
一方、建築面積50㎡・延べ床200㎡(4階建て)の場合は、建ぺい率50%・容積率200%となり、建ぺい率は基準内でも、指定容積率によっては容積率がオーバーしている可能性があります。
売却を検討するときには、「容積率」「建ぺい率」のどちらが問題なのか、あるいは両方がオーバーしているのかで、リスクの内容や是正の方向性が変わってきます。
容積率だけがオーバーしている物件と、建ぺい率も同時にオーバーしている物件では、買主側の受け止め方や評価も変わるため、双方の数値を整理したうえで、不動産会社と「どのような説明をするか」を検討することが大切です。
- 「延べ床面積・階数」が問題なのか、「敷地をどこまで覆っているか」が問題なのかを分けて考える
- 登記情報だけでなく、図面や役所での法令確認もセットで行う
容積率オーバー物件の売却可否と影響
容積率オーバーの物件でも、「絶対に売れない」というわけではありません。
実務では、①既存不適格として整理できるかどうか、②明確な違反建築なのかどうか、③買主がどのような使い方(自宅・賃貸・建て替え前提など)を想定しているかによって、売却のしやすさや条件が変わってきます。
既存不適格として扱える物件であれば、「建て替え時には現行基準に合わせる必要があるが、現状のまま使い続けることは可能」といった整理になるケースが多く、リスクを理解した買主であれば購入を検討しやすい傾向があります。
一方、建築当初から容積率や他の法令に適合していない違反建築の場合は、行政からの是正指導や融資不可の可能性が高まり、一般的な実需層への売却は難しく、買取業者や現金購入の投資家が中心になりがちです。
加えて、容積率オーバーは、住宅ローンの利用可否や評価額、売買契約における説明義務にも影響します。
そのため、「売れるかどうか」だけでなく、「どの条件・どの買主層なら現実的か」「売却後にトラブルにならないか」という視点を持って判断することが重要です。
- 既存不適格か、明らかな違反建築かで、売却難易度が大きく違う
- 住宅ローンの通りやすさが、買主の範囲と価格に直結する
- 説明不足や認識のズレがあると、売却後のトラブルにつながるリスクがある
- 「売れる・売れない」ではなく、「どの条件なら売れるか」で考える
- 法令・融資・価格・契約上のリスクの4つを、セットで確認する
売却できるケースと難しいケース
容積率オーバー物件の売却可能性は、「どのような前提で説明・評価するか」によって変わります。イメージとしては、次のような整理ができます。
| ケース | 売却のしやすさの目安 |
|---|---|
| 既存不適格 | 建築当時は適法で、後の法改正により容積率オーバーとなったパターン。法令違反としての色合いが比較的弱く、リスクを理解した買主であれば売却可能なことが多い。 |
| 軽微なオーバー | 数%程度のオーバーで、安全性や利用に大きな支障がないと判断される場合。きちんと説明すれば、実需・投資家ともに検討余地がある。 |
| 明確な違反建築 | 当初から容積率や他の法令に適合していない建物。是正指導・ローン不可のリスクが高く、一般の実需向けには売却が難しく、主な対象は現金購入の投資家・買取業者となることが多い。 |
売却が比較的しやすいのは、①既存不適格として位置づけられる、②違反部分が限定的で、買主が現状利用を前提に受け入れてくれる、といったケースです。
一方、危険性の高い増築部分がある、確認を受けていない大規模な違反がある、是正命令が出ているなどの場合は、買主候補がかなり限られ、実質的には「土地値+解体前提」に近い形での売却条件になることもあります。
- 「売れない物件」と決めつける前に、既存不適格かどうかを整理する
- 法的リスクが大きい場合には、価格・買主層・売却スキームが大きく制限されることを前提に考える
住宅ローン・融資審査への影響
容積率オーバー物件が売りにくくなる要因の一つが、金融機関の融資審査にあります。
銀行などは、担保となる不動産が法令を守っているかどうかを重視するため、違反建築や既存不適格の程度によって、次のような対応を取ることがあります。
- 融資対象外とし、住宅ローンの利用を認めない
- 建物価値をほとんど評価せず、土地の評価をベースに低めの融資額にとどめる
- 将来の処分リスクが高いと判断し、金利を高く設定したり、自己資金比率を求めたりする
このような扱いになると、買主は「現金で購入できる層」や「自己資金の多い投資家」に絞られやすくなり、住宅ローン前提の一般ユーザーは候補から外れてしまいます。
また、金融機関によって判断基準は異なるため、ある銀行では難しいが別の金融機関なら条件付きで融資可能、といった差が出ることもあります。
売主側としては、「ローンが付きにくい=買主が限られる=価格交渉で不利になりやすい」という流れを踏まえたうえで、古家付き土地扱い・買取業者への売却など、現実的な戦略を検討することが大切です。
- 住宅ローンが難しい前提で、どの買主層をターゲットにするか考える
- 金融機関の対応方針を事前に把握し、「ローン可否」を買主説明用の情報として整理しておく
評価額と売却価格が下がりやすい理由
容積率オーバー物件は、適法な物件より評価額・売却価格が低く見積もられることが多いとされています。その背景には、次のような事情があります。
- 建て替えの際、現行の容積率を守る必要があり、同じボリュームの建物を再建できない可能性がある
- 住宅ローンが組みにくく、現金購入や投資家に買主が限られがちになる
- 行政指導や是正が求められるリスクがあると受け止められやすい
- 将来土地として利用する際に、解体など追加コストがかかる前提で価格調整が行われる
これを整理すると、次のようなイメージになります。
| 項目 | 適法な物件 | 容積率オーバー物件 |
|---|---|---|
| 再建築の自由度 | 現状と同程度の規模で建て替えしやすい | 現行基準に合わせる必要があり、延べ床面積が減る可能性がある |
| 買主層 | 住宅ローン利用の実需層が中心 | 現金購入者・投資家・買取業者が中心になりやすい |
| 価格水準 | 周辺相場を反映しやすい | 土地値から将来リスク・解体費などを差し引く形で評価されることが多い |
- 「建物込みの相場」だけで見るのではなく、「土地値+建物の扱い方」のセットで考える
- 解体費用や再建築時の制限を織り込むと、希望価格とのギャップが大きくなりやすいことを前提にする
契約不適合責任と告知義務の注意点
容積率オーバー物件を売却する際に特に気を付けたいのが、「契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)」と、容積率オーバーに関する告知です。
売主が容積率や既存不適格の情報を把握していながら、買主に十分な説明をしていなかった場合、「契約内容と異なる状態だった」「説明が不十分だった」と主張されるリスクがあります。
【売主側で事前にチェックしておきたいこと】
- 役所で用途地域・容積率・建ぺい率などを確認し、現況との関係を把握しているか
- 既存不適格に当たるのか、違反建築の疑いがあるのか、おおまかな整理ができているか
- 重要事項説明書・物件状況確認書などで、どのような内容が説明される予定かを事前に確認しているか
- 買主から補修費用や損害賠償を請求される可能性
- 信頼関係の悪化により、契約解除を求められるおそれ
容積率オーバー物件の売却では、「どこまで把握し、どこまで説明したか」が重要になります。
分からないことをそのままにせず、「分かっている範囲」と「現時点では判断しきれない点」を整理したうえで、不動産会社・専門家と連携しながら買主への説明内容を固めていくことが、トラブル防止につながります。
売却前に確認したい法令・資料
容積率オーバー物件を売却する前には、「その物件が法令上どう位置づけられているか」「手元の資料で何が分かり、何が分からないか」を整理しておく必要があります。
用途地域や指定容積率、建築確認の有無、検査済証の有無などを確認することで、「既存不適格なのか」「明確な違反の可能性があるのか」といった全体像が見えてきます。
ここで大切なのは、一度に細かい法解釈をしようとするのではなく、「どの資料からどんな情報が取れるか」を一覧にして、一つずつ埋めていくことです。
登記情報や測量図、建築確認図書、建築計画概要書、役所での聞き取りなどを組み合わせて確認することで、売却時の説明やリスクの整理がしやすくなります。
| 資料 | 主に分かること |
|---|---|
| 用途地域・容積率 | その土地に建てられる建物の用途・ボリュームの上限 |
| 建築確認・検査済証 | 建築当時に法令に適合していたかどうかの手掛かり |
| 建築計画概要書 | 確認申請時点の用途・規模・構造などの概要 |
| 登記簿・測量図 | 敷地面積・所有者・権利関係・境界などの情報 |
- 「分かっていること」と「不明なこと」を紙に書き出す
- 法令・図面・登記情報をバラバラに見るのではなく、関連づけて整理する
用途地域と指定容積率の確認方法
容積率オーバーかどうかを判断するには、土地がどの用途地域に属し、どの指定容積率が適用されているかを確認する必要があります。
用途地域は、住宅・商業・工業など土地の利用目的を分類するもので、それぞれに建ぺい率・容積率の上限が定められています。
【用途地域・指定容積率の主な確認手順】
- 市区町村の都市計画課や建築担当窓口で、都市計画図・用途地域図を確認する
- 自治体が提供している都市計画情報のオンラインサービスがあれば、住所や地番から検索する
- 対象地の用途地域区分(例:第一種住居地域・準工業地域など)と、指定建ぺい率・指定容積率をメモしておく
- 前面道路幅員によって実際に使える容積率が変わる場合があるため、道路幅も合わせて確認する
- 地番ベースで調べた方が正確な情報が得られることが多い
- 用途地域・建ぺい率・容積率・道路幅員は一式でメモしておく
建築確認図書・検査済証の確認手順
容積率オーバー物件が既存不適格なのか、当初から違反建築だったのかを判断する手がかりになるのが、建築確認図書と確認済証・検査済証です。
建築確認は、建物を建てる前に計画が法令に適合しているかをチェックする手続きで、工事完了後の検査に適合すると検査済証が発行されます。
【建築確認・検査済証の確認ステップ】
- 手元の資料を探す
購入時の契約書や重要事項説明書、設計事務所・施工会社からの引き渡し書類の中に、確認済証・検査済証が含まれていないか確認します。 - 設計事務所・施工会社へ問い合わせる
建築時の設計者・施工会社が分かれば、確認申請書類や図面の控えが残っていないか確認を依頼します。 - 役所・指定確認検査機関で閲覧する
建築確認番号や建築年が分かる場合、所管の行政庁や確認検査機関で確認図書の閲覧ができるケースもあります(運用は自治体によって異なります)。
- 書類が手元にないからといって、必ずしも確認を受けていないとは限らない
- 確認図面と実際の建物に差がある場合、その増築部分などの扱いを個別に検討する必要がある
建築計画概要書・役所照会の進め方
建築計画概要書は、建築確認を受けた建物について、用途・規模・構造などの概要を記載した書類で、第三者でも閲覧できるようにしている自治体が多くなっています。
概要書を確認することで、「確認時点の延べ床面積・階数・用途」などが把握しやすくなり、現況との違いをチェックする材料となります。
| 項目 | 建築計画概要書で分かること | 売却検討での活用例 |
|---|---|---|
| 用途・構造 | 居宅・店舗などの用途、木造・RC造などの構造 | 用途変更の有無、構造上の特徴を把握する |
| 規模・面積 | 階数、高さ、各階の床面積、延べ床面積など | 確認時点の延べ床面積と現況を比較し、増築の有無・程度を確認する |
| 敷地・位置 | 敷地面積や位置 | 登記簿記載の地積や測量図と照合し、面積の相違がないかチェックする |
役所で照会する際は、所在地・地番・建築年・建築主名など、分かる範囲の情報をメモして窓口へ行くとスムーズです。
自治体によっては、閲覧できる人の範囲(所有者・利害関係人など)や手続き方法(予約制・手数料の有無)が異なるため、事前にホームページや電話で確認しておくと安心です。
- 住所だけでなく地番も事前に確認してから窓口に行く
- 必要書類・手数料・閲覧可能時間などを事前にチェックしておく
測量図や登記情報など権利関係の確認
容積率オーバーかどうかを判断するには、敷地面積がどれくらいかを正確に押さえておく必要があります。
そのため、登記簿に記載された地積だけでなく、実測値を示す測量図や、隣地との境界が確定しているかどうかも重要な情報になります。また、売却にあたっては「誰がどのような権利を持っているか」の整理も欠かせません。
【確認しておきたい主な資料】
- 不動産登記簿謄本(全部事項証明書)
所有者・地目・地積・抵当権などの有無を確認します。 - 公図・地積測量図・確定測量図
境界の位置や実際の敷地形状・面積を確認し、登記地積との違いがないかを見ます。 - 建物登記簿
建物の種類(居宅・店舗兼居宅など)、構造、各階の床面積などを確認し、建築確認図書との整合をチェックします。
- 登記名義人と、実際に売却を進めたい人が一致しているかを確認する
- 抵当権や根抵当権が付いている場合、抹消の必要性と費用・段取りを事前に把握しておく
こうした基礎資料を整理しておくことで、容積率の計算や売却説明の前提が明確になり、後々のトラブルを減らしやすくなります。
同時に、次に説明する売却ルートや価格を検討する際の土台にもなるため、「すでにある情報」と「今後調べるべき情報」を分けてチェックしていくことが大切です。
容積率オーバー物件の売却ルート
容積率オーバー物件をどのような形で売却するかは、①今ある建物をどこまで活かしたいのか、②買主の住宅ローン利用をどの程度重視するか、③売却までにかけられる時間と費用はどのくらいか、という観点で整理すると分かりやすくなります。
代表的な売却ルートとしては、容積率を是正するために減築してから売却する方法、隣地を買い取って敷地を広げる方法、古家付き土地として建物価値を切り離して売却する方法、買取専門業者へまとめて売却する方法などがあります。
それぞれ、価格・スピード・手間のバランスが異なるため、「できるだけ高く売りたい」「早く現金化したい」「とにかく整理を優先したい」など、自分の優先順位を整理してから絞り込んでいくことがポイントです。
| 売却ルート | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 減築して売却 | 適法な状態に近づけることで、住宅ローン審査が通りやすくなる期待がある | 工事費用・工期の負担があり、かけた費用以上の価格アップにつながるとは限らない |
| 敷地拡大 | 隣地等の取得により容積率オーバーを是正できれば、評価改善が期待できる | 隣地が売却に応じるとは限らず、価格交渉や手続きも難易度が高い |
| 古家付き土地 | 「土地値+古家は解体前提」という整理で、買主にとって分かりやすい | 建物の価値はほとんど評価されず、土地値が価格の中心になる |
| 買取業者 | 短期間で現金化しやすく、手続きがシンプル | 一般の仲介と比べると、売却価格は低めになるのが通常 |
- 「金額」「スピード」「手間」のどれを優先するかを最初に決める
- 工事費用や取得費用に対して、どれだけ価格アップが期待できるかを数字で考える
減築して適法化してから売る選択肢
減築は、既存建物の一部を取り壊して床面積を減らし、容積率や建ぺい率を基準内に抑える方法です。
容積率のオーバー幅がそれほど大きくない場合や、一部の増築部分を戻せば基準内になる場合には、「減築してから売却する」という選択肢を検討しやすくなります。
【減築してから売却する場合の流れ】
- 建築士や施工会社に相談し、「どの部分をどの程度減築すれば基準内に収まるか」を検討する
- 減築工事の概算費用・工期・工事中の居住や賃貸への影響を確認する
- 減築後の間取り・広さ・使い勝手と、売却時の想定価格を不動産会社とすり合わせる
- 投じるコストと期待される売却価格の差を踏まえ、減築を実施するかどうか判断する
減築のメリットは、容積率オーバーを解消できれば、住宅ローンが通りやすくなったり、買主にとって安心材料になったりする点です。
一方で、工事費用や設計費、仮住まい費用などが必要になり、そのコストに見合う価格アップが必ずしも見込めるとは限りません。
また、減築により部屋数が減る・動線が悪くなるといったデメリットが出ることもあるため、「費用」「売却価格」「使い勝手」をセットで検討する必要があります。
- 減築前後の想定価格を不動産会社から聞き、費用対効果を数字で比較する
- 工事後の建物が、一般的な買主にとって魅力的な間取り・広さになっているかをイメージする
隣地購入・敷地拡大による解決策
敷地面積を増やすことで、同じ延べ床面積でも容積率の数字が下がる場合があります。隣地の一部・全部を買い取り、同一敷地として扱うことで指定容積率の範囲内に収まるよう調整できれば、容積率オーバーの状態を是正できる可能性があります。
【敷地拡大による是正のイメージ】
- 現状:敷地100㎡、延べ床200㎡、指定容積率160% → 容積率200%でオーバー
- 敷地を125㎡に拡大:延べ床200㎡ → 容積率160%となり基準内に収まる
このように、理屈のうえでは敷地拡大で容積率オーバーを解消できる場合がありますが、実務上は次のような課題もあります。
- 隣地所有者が売却に応じない可能性が高い
- 隣地価格が相場より高く提示されることもある
- 一体敷地として扱える形状かどうか(飛び地にならないかなど)を検討する必要がある
- 分筆・合筆登記や境界確定など、追加の手続き・費用が発生することがある
- 「隣地が買えるかどうか」自体が不確実である前提でプランを立てる
- 隣地取得費用なども含めて、トータルでメリットがあるか慎重に見極める
古家付き土地として売却する方法
容積率オーバー物件の売却で実務上よく用いられるのが、「古家付き土地」として売却する方法です。
これは、建物の価値をほとんど評価しない前提で、「土地としての価値+古家は解体前提(または現況のまま)」という考え方で価格を決めるやり方です。買主側は、将来建て替えを行う前提、あるいは一定期間利用したあと解体する前提で購入します。
【古家付き土地売却のポイント】
- 価格の考え方
周辺の土地相場を参考にしつつ、古家の解体費用や造成費用などを差し引いて売却価格を検討することが多くなります。 - メリット
容積率オーバーなど建物側の問題を、「古家は解体前提」という前提で整理しやすく、買主にも分かりやすい形で説明できる点です。 - デメリット
建物の利用価値や設備を評価に反映しにくく、「まだ住める家なのに建物価値としてはほとんど見てもらえない」と感じることもあります。
| 項目 | 売主側のメリット | 売主側の留意点 |
|---|---|---|
| 価格設定 | 土地相場を基準に話しやすい | 建物部分の価値は基本的に織り込まない前提になる |
| 契約内容 | 「現況有姿」「解体前提」という整理で契約しやすい | 解体費用を誰が負担するか、引渡し条件を明確にしておく必要がある |
- 「建物を高く評価してもらう」より、「土地値をしっかり押さえる」という視点を持つ
- 更地渡しにするかどうか、解体費用を価格にどのように反映するかを早めに決める
買取専門業者に売却する方法
容積率オーバーや違反建築の可能性を抱えた物件を、なるべく早く現金化したい場合に検討されやすいのが、不動産買取専門業者への売却です。
買取業者は、容積率オーバー・既存不適格・築古物件などをまとめて買い取り、その後自社で是正・建て替え・再販などを行うビジネスモデルを取っています。
【買取専門業者に売却するメリット】
- 仲介と異なり業者が直接買主となるため、買い手探しの期間が短く済みやすい
- スケジュールが組みやすく、早期の現金化を見込みやすい
- ローン審査の可否に左右されず、条件がまとまれば現金決済されることが多い
【デメリット・注意点】
- 一般のエンドユーザーに売却する場合と比べると、買取価格は低めに設定されることが多い
- 業者によってリスクの考え方が異なり、提示される価格に差が出やすい
- 「高値買取」をうたっていても、詳細調査後に減額を提示されるケースもあるため、契約条件の確認が重要
- 複数の買取業者から見積もりを取り、価格・条件・入金時期を比較する
- 契約書の内容(解除条件、追加請求の有無など)をよく確認する
買取ルートは、「高値よりもスピードや確実性を優先する」選択肢と言えます。
容積率オーバーの程度や他の売却方法の現実性を踏まえつつ、「どこまで価格を許容できるか」「どのくらいの期間で現金化したいか」を整理してから判断すると、自分にとって納得しやすい決め方がしやすくなります。
売却時のリスクとトラブル防止策
容積率オーバー物件の売却では、「売却できるかどうか」だけでなく、「売却後に大きな問題が起きないか」「思っていた手取りが確保できるか」という観点も非常に重要です。
税金や諸費用の見落とし、容積率オーバーに関する説明不足、売却ルート選びのミスマッチなどがあると、後から「こんなはずではなかった」と感じやすくなります。
売却前に、①税金や諸費用を整理して大まかな手取り額を把握すること、②買主に伝えるべき情報を洗い出すこと、③自分の希望と市場環境を並べて検討材料をそろえること、④相談すべき相手をあらかじめイメージしておくことが、リスクを抑えるうえでの基本になります。
- 金額だけでなく、「手取り額」と「トラブルの起こりにくさ」で売却方法を比較する
- 伝えるべき情報と、現時点で判断しきれない情報を分けて整理する
- 売却ルートごとの特徴を早い段階で把握しておく
- お金に関するリスク(税金・諸費用・想定外の負担)
- 契約・法律面のリスク(説明不足・契約内容の理解不足)
- 人間関係のリスク(買主・近隣・家族とのトラブル)
税金・費用と手取り額の確認
売却価格だけを見て判断してしまうと、税金や諸費用を引いた結果、「想定より手元に残らなかった」という事態になりかねません。
特に容積率オーバー物件は、古家付き土地や買取業者への売却など、価格が抑えられがちなルートを選ぶことも多いため、手取り額のイメージを事前に持っておくことが大切です。
【主に確認しておきたい税金・費用の例】
- 譲渡所得に対する所得税・住民税
売却額から取得費・譲渡費用などを差し引いた利益に対して課税されます。所有期間の長短や居住用かどうかで税率が変わります。 - 仲介手数料
仲介会社を通じて売却する場合、売買価格に応じた範囲で仲介手数料が発生します。 - 登記関係費用
所有権移転登記の登録免許税や、司法書士への報酬などがかかります。 - その他の費用
解体費用(更地渡しの場合)、測量費用、残置物処分費用、引越し費用なども必要に応じて見込む必要があります。
ざっくりとした考え方としては、
「売却価格」-「仲介手数料や登記費用などの諸費用」-「税金」=「最終的に手元に残る金額」
というイメージで、大まかな金額感を確認しておくと安心です。
- 見積もりの段階で、想定される費用項目を一覧にしておく
- 売却価格の想定レンジ(高め・標準・低め)別に、手取り額のおおまかな幅を計算しておく
買主への説明不足で起こりやすいトラブル
容積率オーバー物件は、専門家でないと分かりにくい点が多く、買主にとってもイメージしづらいテーマです。
そのため、「売主は分かっているはず」「買主も理解しているだろう」といった思い込みで話が進むと、後になって認識の違いが表面化し、トラブルにつながるおそれがあります。
【説明不足から起こりやすいトラブル例】
- 容積率オーバーである事実や既存不適格の可能性が十分に説明されておらず、買主が後から知って不信感を抱く
- 売主は「既存不適格」と理解していたが、買主は「違反建築」と受け止めており、評価や想定が大きくずれる
- 売主側は「古家付き土地としての売却」のつもりだったが、買主側は「そのまま長く住み続ける住宅」と理解していた
- 契約書や重要事項説明書の内容を十分に理解しないまま署名し、後から「聞いていない」と感じてしまう
- 容積率オーバーの有無や既存不適格の可能性について、ポイントを箇条書きにして整理する
- 口頭説明だけに頼らず、図面や資料を見せながら確認してもらう
ハッキリ分からない部分を「分からない」と示しつつ、調べて分かる範囲は確認しておくことで、売主・買主双方の認識差を小さくすることができます。
売却前に整理しておきたい判断材料
容積率オーバー物件の売却は、通常の物件以上に「事前準備」が重要です。思いつきでルートを決めてしまうと、後から「別の方法の方が良かったかもしれない」と感じやすくなります。
【事前に書き出しておきたい主な項目】
- 物件の現状
容積率・建ぺい率の状況、既存不適格か違反の疑いがあるか、建物の築年数や状態、現在の利用状況(自宅・賃貸・空き家など)。 - 自分側の条件・希望
売却したいタイミング(いつまでに売りたいか)、最低限確保したい手取り額、引越しや解体のタイミング、家族の意向など。 - 市場環境・選択肢
周辺の土地・戸建て相場、古家付き土地としての価格感、買取業者の条件イメージ、減築や敷地拡大の現実性など。 - リスク許容度
「多少時間がかかっても高値を目指すのか」「価格は抑えても早く確実に現金化したいのか」など、何を優先するか。
| 観点 | 主な内容 | 整理のポイント |
|---|---|---|
| 物件側 | 法令状況・建物状態・利用状況 | 図面・登記・役所確認をもとに、事実ベースでメモする |
| 自分側 | スケジュール・手取り額・家族の意向 | 「必ず守りたい条件」と「できれば」という条件に分ける |
| 市場側 | 相場・売却ルート・買主層 | 複数の不動産会社などから意見を聞きつつ補正する |
- 頭の中だけで考えず、紙や一覧表に書き出して可視化する
- 変えられない条件と、交渉や工夫の余地がある条件を分けておく
容積率オーバー物件の相談先の選び方
容積率オーバー物件について情報を集める際には、「法令の話」「建物の技術的な話」「価格・相場の話」「税金の話」など、テーマごとに相談先を分けて考えると効率的です。
【主な相談先と役割のイメージ】
| 相談先 | 主な内容 | 確認したいポイント |
|---|---|---|
| 市区町村の建築担当窓口 | 用途地域・容積率・建ぺい率・既存不適格の扱いなど法令面 | 現行法での位置づけと、建築当時からの変更点があるか |
| 不動産会社 | 周辺相場・売却ルート・買主層の傾向 | 容積率オーバーや既存不適格の物件を扱った実績があるか |
| 建築士・施工会社 | 減築や補修の可否、工事内容・費用の概算 | どの部分を減築すれば基準内に収まるか、建物の安全性への影響 |
| 金融機関 | 当該物件に対する融資方針 | どのような条件ならローンの対象になり得るか |
- 容積率オーバーや既存不適格物件についての対応経験があるかどうかを確認する
- メリットだけでなく、リスクやデメリットも含めて説明してくれるかに注目する
法令・建物・価格・税金といったそれぞれの分野について、適切な専門家に相談しながら情報を集めることで、自分の物件に合った現実的な売却方針を検討しやすくなります。
まとめ
容積率オーバー物件を売却するときは、①容積率と建ぺい率の基本と、自分の物件がオーバーしているかどうかを整理すること、②既存不適格か明確な違反建築かを見極めること、③住宅ローン・評価・価格への影響を理解すること、④用途地域や容積率、建築確認図書・登記情報など必要な資料をそろえること、⑤減築・敷地拡大・古家付き土地売却・買取業者利用など複数のルートを比較することが重要です。
まずは、登記簿や図面、役所で確認できる情報をもとに現状を紙に書き出し、家族とも共有しながら「自分たちが何を優先したいのか」を整理するところから始めてみてください。
そのうえで、不動産会社や建築士、必要に応じて行政窓口・専門家にも相談しながら、一人で抱え込まずに段階的に判断していくことが、容積率オーバー物件の売却で損をしないための大切なポイントです。




















