「容積率オーバーと言われたが、違法なのかどうか」「このまま売買して本当に問題がないのか」と不安に感じている方は少なくありません。
この記事では、そもそも容積率とは何かという基本から、容積率オーバー物件の考え方、既存不適格との違い、想定されるリスク、売却や活用の選択肢、購入前に確認したいポイントまでを順を追って整理していきます。あくまで一般的な考え方をまとめた内容ですので、最終的な判断を行う際には、具体的な状況に応じて専門家のアドバイスも踏まえて検討することを前提にしてください。
容積率オーバー物件の基本
容積率オーバー物件を理解するには、「容積率とは何か」「なぜオーバーが起こるのか」を切り分けて押さえておくことが大切です。
容積率は建築基準法で定められた指標で、「その土地に対してどの程度まで延べ床面積の建物を建てられるか」を数値で示したものです。
上限値は、用途地域や前面道路の幅員などによって決まり、都市計画でエリアごとに指定されています。
この上限を現行基準で超えている建物が、広い意味で「容積率オーバー物件」と呼ばれますが、その中身は一様ではありません。
かつては法律に適合して建てられたものの、後から規制が厳しくなったために基準を超える状態になった「既存不適格建築物」と、建築当初から基準を満たしていなかった、あるいは増築等により現行基準を上回っている「違法建築に近い状態」が混在しています。
また、容積率とよく似た用語として「建ぺい率(建蔽率)」があります。こちらは「敷地に対して建物の建っている部分の割合」をみる指標で、見ている対象が異なります。
この二つを混同すると、どこに問題があるのかが分かりにくくなるため、定義と計算の考え方を分けて理解しておくと整理しやすくなります。
【まず押さえたい基本ポイント】
- 容積率:延べ床面積の合計と敷地面積の比率を見る指標
- 建ぺい率:建物が建っている部分の面積と敷地面積の比率を見る指標
- 容積率オーバー物件には、「既存不適格」と「違法建築に近いケース」の両方が含まれる
- 「オーバーしている=すべてダメ」と決めつけず、法改正の影響か建て方の問題かを切り分けて確認する
- 容積率・建ぺい率・用途地域・前面道路幅員など、関係する数値を個別に整理する
- 「すぐ是正が求められる違反」なのか、「現況利用が認められやすい既存不適格」なのかを区別して考える
容積率の意味と計算方法
容積率は、建築基準法第52条で「建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合」と定義されています。
平たく言うと、「土地の広さに対して、全体としてどのくらいの床面積の建物を建ててよいか」をコントロールするためのものです。
ここでいう延べ面積とは、原則として各階の床面積を合計したものを指しますが、駐車場や機械室など一部は容積率の算定から除外される場合があります(法令・政令で除外規定が設けられている部分)。
基本的な計算式は次のとおりです。
- 容積率(%)= 延べ面積 ÷ 敷地面積 × 100
たとえば、敷地面積100㎡に延べ面積200㎡の建物が建っている場合、容積率は200%という計算になります。
このとき上限として効いてくるのが、都市計画で定められた「指定容積率」と、前面道路の幅員に応じて決まる「道路による容積率制限」で、一般的にはこのうち低い方の数値が上限となります。
| 用語 | 概要 |
|---|---|
| 延べ面積 | 原則として各階の床面積の合計(一部、算定から除外される部分あり) |
| 容積率 | 延べ面積÷敷地面積×100(%)。用途地域や道路幅員から上限値が決まる。 |
| 指定容積率 | 都市計画で、用途地域ごとに定められている容積率の上限。 |
- 延べ面積と敷地面積の元データが、登記簿や図面と一致しているかを確認する
- 「指定容積率」と「前面道路による制限」のどちらが上限として効いているかを把握する
- 地下室や駐車場など、算入・除外のルールが絡む部分は、自己判断せず専門家にも確認する
容積率オーバー物件の定義
容積率オーバー物件とは、広い意味では「今の法律に基づいて計算すると、容積率の上限を超える延べ床面積になっている建物」を指します。ただし、その背景は大きく分けて二つあります。
ひとつは、建てられた当時は容積率の基準を守っていたものの、あとから用途地域の変更や容積率の引き下げが行われた結果、現行基準ではオーバーとなっているパターンで、これは一般に「既存不適格建築物」と呼ばれます。
もうひとつは、建築当初から容積率の規定に合っていなかった、あるいは増築等によって現行基準を超える状態になった建物で、こちらは「違反建築に近い扱い」になる可能性があります。
【容積率オーバー物件に含まれる主なパターン】
- 後の法改正や用途地域の変更により、結果的に容積率が超過した建物(既存不適格)
- 確認申請当時の余裕が小さく、その後の増築で上限を超えてしまった建物
- そもそも確認申請どおりに建てられていない、または確認を受けずに建てられた建物
- 既存不適格は、「建築時点では適法」だったものが、後のルール変更でオーバーになったパターンである
- 建築当初から基準に合っていなかった建物は、是正指導や用途制限など、より重いリスクを負いやすい
- 「なぜオーバーしているのか」という原因を確認しないと、リスクの大きさを正しく判断しづらい
既存不適格と違法建築の違いのポイント
既存不適格建築物とは、建物を建てた当時は建築基準法や都市計画に適合していたものの、その後の法改正や用途地域の見直しなどにより、現在の基準で見ると適合していない状態になっている建物を指します。
このような建物については、建築基準法第3条第2項などで「一定の条件のもとで、直ちに現行基準への適合を求めない」という考え方が示されています。
これに対し、一般的に「違法建築」と呼ばれるのは、建築当初から建築基準法や確認内容に合っていない建物、または増築や用途変更により現行基準に違反した状態になっているのに是正されていない建物です。
こうした建物は、行政から指導や是正命令の対象となるおそれがあり、増改築・用途変更・融資などで不利になりやすいと考えられます。
- 既存不適格:建てた時点では法令に適合していたが、後のルール変更で現行基準に合わなくなった状態
- 違法建築:建てた時点または増築時点から、基準や確認内容に反している状態
- 同じ容積率オーバーでも、行政からの扱いや是正の必要性が大きく異なる可能性がある
建ぺい率との違いと関係性の確認
容積率とセットで語られることが多いのが「建ぺい率(建蔽率)」です。建ぺい率は建築基準法第53条で、「建築面積の敷地面積に対する割合」と定義されており、敷地のうちどの程度まで建物の平面部分を建ててよいかを制限する指標です。
容積率が「延べ床面積の大きさ(建物のボリューム)」を規制しているのに対し、建ぺい率は「真上から見た建物の広がり」を規制しているイメージです。
そのため、容積率オーバー物件を検討するときは、「容積率だけが超えているのか」「建ぺい率もあわせて超過しているのか」を分けて確認することが重要になります。
| 指標 | 何を見ているか | 主なチェックポイント |
|---|---|---|
| 容積率 | 延べ床面積(床の合計)と敷地面積の割合 | 階数・各階面積・地下部分の扱いなどを含めて確認する。 |
| 建ぺい率 | 建築面積(真上から見た建物平面)と敷地面積の割合 | 建物配置、庭や駐車スペースの広さ、隣地との離れなどをチェックする。 |
- 容積率と建ぺい率の両方が超過している場合、是正の手間や費用が大きく変わるため
- 建て替え時には両方の上限を前提に新しい建物の規模を検討する必要があるため
- 「どの規制がどの程度ネックになっているか」を分けて把握することで、リスクと対応策を整理しやすくなるため
容積率オーバーになる経緯とパターン
容積率オーバー物件というと、「故意に違反して建てた建物」という印象を持たれがちですが、実際にはさまざまな経緯で生じます。
建築基準法や都市計画は、防災や街づくりの観点から見直しが続けられており、過去には適法だった建物が、あとから容積率オーバーと扱われるようになったケース(既存不適格建築物)も珍しくありません。
一方で、増築や用途変更の際に必要な手続きが適切に行われていなかったり、敷地面積の把握違いがあったりすることが原因で、建てた時点から上限を超えていた「違反寄り」の状態になっている場合もあります。
【容積率オーバーが発生しやすい代表的なパターン】
- 法改正や用途地域変更で、容積率の上限が低くなった結果生じたケース
- バルコニーの囲い込みや増築を重ねるうちに、延べ床面積が基準を超えたケース
- 実測すると敷地面積が登記より小さく、想定より容積率が高くなってしまったケース
- 「建築当時の法令・用途地域」と「現在の法令・用途地域」を分けて見る
- 増築・用途変更の履歴がないか、図面や古い契約書から洗い出す
- 容積率計算に使っている敷地面積の根拠(登記・公図・実測)を確認しておく
法改正や用途地域変更で超過する事例
よくあるのが、「建築時点では容積率の基準を守っていたものの、その後の都市計画変更や建築基準法改正で容積率が引き下げられ、結果的にオーバー扱いになった」というパターンです。
こうした建物は既存不適格建築物に該当する可能性があり、建て替えや大規模改修の場面を除けば、直ちに現行基準への是正を求められない扱いになることがあります。
具体的には、次のようなケースがイメージしやすいでしょう。
- もともと商業地域で容積率400%だったエリアが、後の都市計画変更で300%に引き下げられた
- 防災上の見直しなどにより前面道路の扱いや用途地域が変わり、容積率の上限が低くなった
- 高度地区指定などにより、建物の形態規制全体が厳しくなった
- 建物の建築年と、その後の都市計画変更・用途地域変更の有無を年代順に整理する
- 建築確認申請書や確認済証が残っている場合は、当時の容積率条件を確認する
- 「当時は適法だが、今の基準ではオーバー」という場合、既存不適格扱いとなる可能性を念頭に置く
増築やリフォームで超過しやすいパターン
もう一つ多いのが、増築やリフォームの積み重ねにより、結果として容積率の上限を超えてしまうパターンです。
一定の規模以上の増築・改築・用途変更には建築確認が必要で、容積率も含めて現行基準との適合性が審査されます。
ところが実務では、「少し囲い込むだけ」「既存部分の延長だから大丈夫」といった認識で、確認申請を行わないまま工事が行われ、延べ床面積だけが増えていくケースも見られます。
【容積率オーバーにつながりやすい増築・リフォーム例】
- 屋外だったバルコニーやルーフバルコニーを全面的に部屋として囲い込んだ
- 車庫やピロティ部分を壁で囲い、居室や倉庫として使い始めた
- 屋根裏やロフトを本格的な居室仕様にし、床面積として扱われるようになった
| 工事内容 | 容積率への影響 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| バルコニー囲い込み | 本来は屋外扱いだった部分が室内化し、延べ床面積に算入される可能性が高い。 | 容積率の余裕や確認申請の要否を確認せず行うと、超過リスクがある。 |
| 車庫の部屋化 | 用途や開口部によっては、駐車スペースから床面積扱いに変わる場合がある。 | 防火・避難・駐車台数など、他の要件との関係も含めて検討が必要。 |
- 小規模な工事でも、延べ床面積がどれくらい増えるのかを把握しておく
- 過去に何度もリフォームしている物件では、合計の延べ床面積が確認済図書と一致しているか確認する
- 確認申請が必要な工事を無申請で行っていると、容積率以外の部分でも違反が重なっているおそれがある
測量誤差や登記面積の相違による注意点
容積率の算定では、「延べ床面積」とともに「敷地面積」が重要な前提になります。ここで問題になりやすいのが、「登記簿に記載された地積(公簿面積)」と「実際に測量した面積(実測面積)」のズレです。
登記上の地積が必ずしも現況と一致していない地域では、実測してみると公簿より面積が小さい・大きいということがあり得ます。
特に、公簿より実測面積が小さい場合、同じ延べ床面積でも容積率が高くなってしまうため、「図面上はクリアしていると思っていたのに、実はオーバーしていた」という状況になりかねません。
| パターン | 容積率への影響イメージ |
|---|---|
| 公簿 > 実測 | 実際の敷地が小さくなるため、同じ延べ床面積でも容積率が高くなり、オーバー判定になりやすい。 |
| 公簿 < 実測 | 敷地が想定より広ければ、容積率は低くなる方向に働くが、境界確認や登記修正が必要になる場合もある。 |
- 容積率の計算に、公簿面積と実測面積のどちらを使っているかを確認する
- 境界に争いのある土地や古い公図の地域では、測量結果とのズレが大きくなることがある
- 売買や建て替えを検討する場合、面積の前提をそろえたうえで容積率を再計算することが大切
どこから違法か判断する際の目安
「容積率オーバー」と聞くと、すべてが直ちに違法建築のように感じられますが、現実には既存不適格として扱われるケースと、違反建築に近い扱いとなるケースが混ざっています。
違法性の有無を検討する際には、「いつの基準で適法だったのか」「どの時点で基準から外れたのか」を整理することが重要です。
【違法性を考えるときの主な目安】
- 建築当時の確認申請図面どおりに建てられているか(図面と現況に大きな差がないか)
- 増築・用途変更時に、必要な建築確認や検査を受けているか
- 容積率の上限が引き下げられる前からオーバーしていたのか、後からオーバー扱いになったのか
- 建築年・増築年ごとに、どのような工事をしたのかを時系列でメモにしておく
- 手元にある図面・確認済証・検査済証・登記簿などの関連資料を一か所にまとめておく
- 行政の建築指導担当課などで相談する際に、これらの情報が整理されているとスムーズに話が進みやすい
容積率オーバー物件のリスクと注意点
容積率オーバー物件のリスクは、「今住めるかどうか」に限った話ではありません。将来建て替えたときの建物規模、住宅ローンや事業用融資の可否、売却のしやすさ、リフォームの自由度など、長期的な選択肢に大きく影響します。
既存不適格や容積率オーバー物件に関する解説では、主なデメリットとして「同じ規模の建物に建て替えられない」「金融機関の評価が厳しくローンが付きにくい」「市場価値が下がりやすい」といった点が挙げられています。ここでは、とくに重要な4つのリスクと注意点を整理します。
- 建て替え時に、現在より小さい建物しか建てられない可能性がある
- 住宅ローン・投資用ローンなどの審査が厳しくなり、条件が悪化しやすい
- 買い手が限られ、売却価格が抑えられたり、売却期間が長引きやすい
- 増築・大規模リフォームに制限がかかり、思いどおりに改修できないことがある
再建築時に建物規模が小さくなるリスク
容積率オーバー物件は、現状のまま居住や賃貸に使えているケースも多くありますが、将来建て替えを検討する段階になると「現行の容積率」に合わせる必要が出てきます。
その結果、今と同じ延べ床面積の建物を建てられず、規模を小さくせざるを得ないことが少なくありません。
簡単なイメージを示すと、次のようになります(数値はあくまで例です)。
| 条件 | 現在の建物 | 建て替え後の上限イメージ |
|---|---|---|
| 敷地 | 敷地面積100㎡ | 敷地面積100㎡(変わらず) |
| 容積率 | 現行の指定容積率200% | 同じく指定容積率200% |
| 延べ床面積 | 現状240㎡(容積率240%) | 上限200㎡(容積率200%)まで |
この例では、建て替え時には延べ床面積を40㎡減らさないと確認が下りない可能性が高くなります。その結果として、
- 自宅用なら:部屋数を減らす、各部屋の広さを削るなどの見直しが必要になる
- 賃貸用なら:戸数や専有面積が減り、家賃収入が下がる可能性がある
といった影響が想定されます。
- 「今の使い勝手」だけで判断すると、将来の建て替え時に床面積が減るリスクを見落としやすい
- 建て替え後の想定家賃や居住スペースを事前にイメージしておかないと、資金計画が崩れやすい
- 再開発や建て替えを前提に購入する場合は、「建て替え後のプラン」をあらかじめ試算しておくことが重要
住宅ローンや融資審査への影響の注意点
容積率オーバー物件は、金融機関から見ると法令違反または既存不適格の建物として扱われることが多く、担保評価や融資審査が厳しめになる傾向があります。
住宅ローンの説明では、「容積率オーバーでも融資自体は可能な場合があるが、審査が厳しくなり、借入額が抑えられたり、金利条件が不利になることがある」といった解説も見られます。
また、既存不適格物件向けにローンを用意している金融機関でも、「容積率や建ぺい率の超過が一定の範囲内にとどまること」「違反建築と判断されないこと」など、内部基準を設けているケースがあります。超過率が大きい物件ほど融資が難しくなる方向に働くと考えておくと良いでしょう。
- 検討中の金融機関が、既存不適格・容積率オーバー物件を融資対象にしているかどうか
- 容積率・建ぺい率がどの程度オーバーしているのか、数値で把握しておく
- 「土地の評価を中心に貸せるかどうか」「どこまで借入額が出るか」を事前に相談しておく
売却価格と流通性に関するデメリット
容積率オーバー物件は、買主側から見ると「ローンが付きにくいかもしれない」「将来建て替えの自由度が低いかもしれない」といった不安材料を抱えています。
そのため、一般的な適法物件と比べると、購入希望者が少なくなりやすく、売却価格も抑えられる傾向があります。
| 観点 | 一般的な適法物件 | 容積率オーバー物件 |
|---|---|---|
| 買い手層 | 自己居住用の購入者から投資家まで幅広い | 現金購入者や専門業者・一部投資家などに絞られやすい |
| 価格水準 | 周辺相場を基準に決まりやすい | リスクを織り込んで、相場より割安になるケースが多い |
| 売却期間 | 条件が合えば比較的スムーズ | 内覧数が伸びにくく、成約まで時間がかかることがある |
- 一般のエンドユーザー向けに販売するのか、専門の買取業者に売却するのか、出口戦略を明確にする
- 容積率オーバーの内容や経緯を整理し、重要事項説明で分かりやすく説明できる状態にしておく
- 「早期に売り切るための価格」と「時間をかけて高値を狙う価格」をシミュレーションし、現実的な水準を検討する
修繕・増改築にかかる制限と手続き
容積率オーバー物件では、「日常的な修繕」と「増築や大規模リフォーム」の扱いが異なります。
建築基準法では、一定規模以上の増築・改築・用途変更などに建築確認が必要とされており、すでに容積率オーバーの状態であれば、新たに床面積を増やすような増築は認められないことが少なくありません。
一方で、屋根や外壁の張り替え、防水工事、内装の模様替えといった、建物の規模や用途を変えない修繕であれば、現況のまま行えるケースもあります。
ただし、どこまでが「単なる修繕」で、どこからが「増築・大規模改修」とみなされるかは、工事内容や自治体の解釈によって変わり得ます。
【工事内容とチェックしたいポイント】
- 屋根・外壁の張り替え:通常は現況維持の修繕として扱われることが多い
- バルコニーの囲い込み・車庫の部屋化:延べ床面積に影響し、容積率の超過に直結する可能性がある
- 階数を増やす・建物外形を広げる:増築として建築確認が必要になる可能性が高い
- 床面積が増えるかどうか、用途が変わるかどうかを基準に、容積率への影響を考える
- 過去に無申請の増築がある物件では、現況と確認済図書の差を整理しておく
- 規模の大きな改修を検討するときは、事前に自治体の建築担当窓口や設計者に相談してから進める
容積率オーバー物件の売却と活用方法
容積率オーバー物件は、「売りにくい」「ローンが通りづらい」といったマイナスイメージが先行しがちですが、売却方法や活用の工夫次第では、一定のニーズが見込めるケースもあります。
既存不適格物件の事例では、広さを評価して仲介で売却するパターンや、減築や隣地購入によって適法化してから売却するパターン、買取専門会社に一括で売却するパターンなどが紹介されています。
売却や活用を検討する際には、「現況のまま利用・売却するのか」「手をかけて適法化したうえで売るのか」「自分で保有を続けるのか」といった選択肢を並べ、費用とメリット・デメリットを比較することが重要です。
また、既存不適格なのか、違反建築に近いのかという前提を明確にしておくことで、買主への説明や価格設定もしやすくなります。
- 現況のまま保有・売却する場合のメリットとリスク
- 減築や隣地購入などで適法化する場合のコストと見返り
- 仲介による売却と買取専門会社への売却、それぞれの違い
現状のまま売却するときのポイント
容積率オーバー物件でも、現況のまま売却すること自体が可能なケースは少なくありません。特に既存不適格として位置付けられる建物であれば、一般の仲介ルートで売買される例もあります。
ただし、買主側から見ると「将来的な建て替えに制約がある」「ローン審査が厳しいかもしれない」といった懸念があるため、通常の適法物件と比べると価格が抑えられたり、成約まで時間がかかったりする傾向があります。
【現況のまま売却する際に押さえたいポイント】
- 容積率オーバーの内容(既存不適格なのか、違反に近いのか)と経緯を整理しておく
- 建築確認済証・検査済証・設計図書など、建物の来歴を説明できる資料を準備しておく
- 「延べ床面積が広い」というメリットと、「建て替え・ローンの制約」というデメリットを、販売資料や重要事項説明でバランスよく伝える
| 説明したいポイント | 内容のイメージ |
|---|---|
| 広さ | 現行基準で新築する場合よりも延べ床面積が大きく、ゆとりある間取りを確保できている点 |
| 制約 | 建て替えの際には現行容積率に合わせる必要があり、規模が小さくなる可能性がある点 |
| ローン | 金融機関によって評価が異なり、借入条件に制約がかかることがある点 |
- 問題点を隠したまま高値で売却しようとすると、後々のトラブルにつながるおそれがある
- 買主がローンを組めない場合、現金購入や投資家などに対象が限られることを想定しておく
- 価格だけでなく、売却期間や条件交渉も含めてシミュレーションしたうえで方針を決める
減築や隣地購入で適法化する選択肢
容積率オーバーを是正する代表的な方法として「減築」と「隣地購入」があります。減築は、建物の一部を解体したり階数を減らしたりして、延べ床面積を現行の容積率の範囲内に収める方法です。
隣地購入は、敷地面積を増やすことで同じ延べ床面積でも容積率の数値を下げるやり方です。
既存不適格や容積率オーバー物件の売却では、
- 減築により適法な状態に近づけてから、ローン利用がしやすい物件として売却する
- 隣地をまとめて購入し、容積率・建ぺい率をクリアしたうえで土地・建物として活用する
といった戦略が検討されることもあります。
【減築・隣地購入を検討する際の主な視点】
- 解体・工事費用や隣地取得費用に対して、売却価格や活用の幅がどれだけ改善するか
- 減築後・隣地取得後の固定資産税や維持費がどう変わるか
- 工事期間中の賃料収入・自己利用への影響(空室期間が発生するかなど)
| 方法 | メリット | 留意点 |
|---|---|---|
| 減築 | 現行法に適合させやすくなり、ローン利用や売却がしやすい方向に働く。 | 工事費用がかかり、床面積が減ることで家賃収入や居住スペースも減少する。 |
| 隣地購入 | 敷地を広げることで容積率が下がり、既存建物をそのまま活かせる場合もある。 | 隣地所有者の意向などに左右されやすく、そもそも実現できない可能性もある。 |
- かけるコストと、売却しやすさ・価格の改善、生涯の収支バランスを比較する
- 長期保有するのか、一定期間で売却・建て替えを予定しているのかによって最適解が変わる
- 隣地購入はタイミング・条件次第のため、「可能であれば選択肢」として考える程度にしておく
既存不適格としての訴求と説明方法
同じ容積率オーバーでも、「建築当時は適法だったが、法改正等で現行基準に合わなくなった」という既存不適格物件であれば、違反建築と比べて評価が分かれます。
説明の仕方によっては、「広さに対して価格が抑えられている」「しばらくは現状のまま使える」といった特徴をプラス要素として伝えられることもあります。
【既存不適格として説明する際に整理したい事項】
- 建物が建てられた年代と、当時の建築基準法・都市計画上の条件
- どのタイミングの法改正・用途地域変更をきっかけに現行基準とずれたのか
- 現行基準に比べて、容積率がどの程度オーバーしているかのおおよその数字
- 建て替えや大規模改修をする場合、どの程度規模が変わる可能性があるか
- 「法律上まったく問題ない」と断定せず、現行基準との違いや制約も併せて説明する
- 広さや価格のメリットだけを強調しすぎると、将来の建て替え・ローン等の制約を見落とさせてしまう
- パンフレットや重要事項説明書に、既存不適格である経緯と注意点を分かりやすく記載しておく
買取専門会社などの活用ケース
一般の市場で買い手を見つけるのが難しい場合、容積率オーバー・既存不適格・再建築不可といった「訳あり物件」を扱う買取専門会社に売却する方法もあります。
仲介による売却より価格は抑えられるものの、現金化までのスピードが速いことや、残置物・権利関係などの整理をまとめて任せられるケースがあることが特徴です。
【買取専門会社を利用する際の主なポイント】
- 相場と比べてどの程度のディスカウントになるか、複数社の見積もりで幅を把握する
- 老朽化・残置物・境界未確定など、通常の売却で障害となる要素をどこまで引き受けてもらえるか確認する
- 「価格を優先するのか」「早く手放すことを優先するのか」を事前に決めたうえで、仲介売却との比較を行う
- 急ぎで現金化したい事情があり、ある程度の値下げには納得できる場合
- 老朽化や権利関係の複雑さから、一般の買主が付きにくいと想定される場合
- 解体や残置物処分、境界調整などを自分で対応するのが難しい場合
購入前の調査とトラブル予防
容積率オーバー物件の購入を検討するときは、「どこまで事実として確認できているか」を書類と数値で押さえておくことが重要です。
登記情報・建築確認関連の書類・図面などを組み合わせて確認することで、敷地面積・延べ床面積・容積率・建ぺい率などの前提が整理され、既存不適格なのか増築などによる超過なのかといった大まかな方向性が見えてきます。
あわせて、役所の担当窓口で用途地域や指定容積率を確認したり、重要事項説明書の内容から、「建て替えや相続のしやすさ」に関係する条件を読み解いたりすることも、トラブル予防に役立ちます。
数字と書類に基づいて現況を把握したうえで、自身や家族のライフプランに照らして判断する姿勢が大切です。
- 図面・登記・建築確認などによる「数値のチェック」
- 行政窓口での「用途地域・容積率条件の確認」
- 契約書・重要事項説明書に書かれた「権利関係・制限事項」の把握
- 建て替え・相続など将来の「出口戦略」を踏まえた判断
図面と登記・建築確認で確認する項目
まずは、手に入りやすい資料をそろえ、それぞれが示している数値を突き合わせるところから始めます。
代表的な資料としては、土地・建物の登記簿、公図や地積測量図、建築確認申請書・確認済証・検査済証、設計図書(平面図・配置図など)が挙げられます。
これらを組み合わせて確認することで、
- 敷地面積・延べ床面積・建築面積の前提となる数値
- 容積率・建ぺい率の計算にどの数値を使っているか
- 図面と実際の建物の形状・面積にズレがないか
といったポイントを把握できます。
| 資料 | 確認したいポイント |
|---|---|
| 土地の登記簿 | 地目・地積(㎡)、所有者、抵当権など。容積率計算に使う敷地面積の参考となる。 |
| 建物の登記簿 | 構造・階数・床面積(各階)。登記の床面積と図面・現況の差がないか確認する。 |
| 建築確認関係書類 | 確認申請時の建築面積・延べ床面積・階数、検査済証の有無などをチェックする。 |
【図面・登記を確認するときのチェックリスト】
- 登記簿の床面積と、設計図書・販売図面の表示が大きく違っていないか
- 図面上の建物の外形と、現地で見る建物の形が食い違っていないか
- 図面にない増築部分・囲い込み部分が現地に存在しないか
- 古い図面のまま更新されておらず、増築分が反映されていないケースがある
- 地積と実測面積にズレがある地域では、容積率評価が変わる可能性がある
- 「図面があるから安心」と決めつけず、現地の状況と照らし合わせて確認することが重要
行政窓口や専門家へ相談するタイミング
容積率オーバー物件では、資料だけでは判断しきれない部分をどう補うかがポイントになります。用途地域や指定容積率、前面道路幅員に基づく制限、高度地区などに関する情報は、市区町村の都市計画課・建築指導課などで確認できます。
また、確認申請図書や検査済証の閲覧が可能な自治体もあり、建築当初の計画内容と現況の差を把握する手がかりになります。
【行政窓口などに相談を検討したい場面】
- 図面や登記に記載されている容積率・建ぺい率と、現行の用途地域や道路状況が合っているか不安なとき
- 増築の履歴があるが、建築確認や検査が行われているか分からないとき
- 容積率オーバーの理由が、法改正による既存不適格なのか、当初からの超過なのか判断しづらいとき
- 土地・建物の登記簿、公図、地積測量図
- 建築確認済証・検査済証、設計図書(ある場合)
- 不動産会社や売主から受け取った物件資料や重要事項説明書の写し
契約書や重要事項説明で見るべき事項
購入時には、「売買契約書」と「重要事項説明書」の内容を細かく確認することが欠かせません。重要事項説明書には、用途地域・建ぺい率・容積率、建築確認の有無、既存不適格や違反建築物の有無などが記載されます。
ここで、容積率オーバーや既存不適格の説明がどう書かれているかは、あとからトラブルにならないかどうかを左右します。
【確認しておきたい主な項目】
- 用途地域・建ぺい率・容積率の数値と、それに対する現況建物の位置づけ
- 建築確認番号・確認年月日・検査済証の有無などの記載
- 既存不適格である旨や、増改築・建て替えに関する制限の説明
- 修繕・是正が必要な場合に、売主と買主のどちらが負担するかに関する特約の内容
| 書類 | チェック観点 |
|---|---|
| 重要事項説明書 | 法令制限の欄に、用途地域・建ぺい率・容積率と、既存不適格・違反建築に関する説明があるか。 |
| 売買契約書 | 現況有姿での引き渡しかどうか、将来の是正義務や責任分担がどのように定められているか。 |
- 口頭での説明内容と、重要事項説明書・契約書の記載に矛盾がないかを確認する
- 「既存不適格の可能性あり」などあいまいな表現の場合、具体的に何を指すのか質問しておく
- 特約条項に、買主側の負担で是正する旨が含まれていないか、最後まで読み込む
将来の建て替えや相続を見据えた判断軸
容積率オーバー物件を購入する際には、「今の使い勝手」だけでなく、「将来建て替えるとき」「相続が発生したとき」にどう影響するかという視点も欠かせません。
建て替え時に大幅な減築が必要になると、二世帯住宅への建て替えが難しくなったり、賃貸部分の戸数が減って収益性が落ちたりする可能性があります。
また、相続の場面では、容積率オーバーや既存不適格であることを十分に理解していないと、「売るのか残すのか」「誰が住み続けるのか」といった話し合いがまとまりにくくなることもあります。
【将来を見据えた主な判断軸】
- 建て替えを検討するタイミングと、そのときの家族構成(子どもの独立状況や親の介護など)
- 建て替え後に確保できそうな床面積や戸数のイメージ
- 相続人の人数や、それぞれの居住ニーズ・売却に対する希望
- 「今後10年」と「20〜30年先」の2つの時間軸で、利用イメージを紙に書き出してみる
- 建て替え・売却・相続といった節目で、容積率の制約がどう影響するかを意識する
- 数字だけでなく、家族の希望やライフプランも含めて総合的に判断する
まとめ
容積率オーバー物件は、「違法建築」なのか「既存不適格」なのかによって意味合いが大きく変わり、建て替え可能な規模や住宅ローンの条件、売却価格・売却しやすさに直接影響します。
まずは、登記・図面・建築確認書類などを基に、容積率・建ぺい率・用途地域・法改正の有無を整理し、「なぜオーバーしているのか」を把握することが出発点です。
そのうえで、現況のまま保有・売却するのか、減築や隣地購入で適法化を目指すのか、買取専門会社を活用するのかなど、自分や家族のライフプランや相続も含めて比較検討していくことが大切です。
最適な選択肢は物件ごと・家庭ごとに異なりますので、迷う場面では不動産会社や建築士、弁護士・税理士などの専門家に相談しながら、独断で決めない姿勢を心がけると安心です。





















