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長期譲渡所得の節税徹底攻略|高所得者が抑える5大特例と売却タイミング

不動産や株式を売却して得た利益でも、長期譲渡所得なら税率を抑えつつ次の投資に再投入できます。本記事では3,000万円特別控除や所有10年超の軽減税率など5大特例と売却タイミングの最適化を解説し、高所得者でも合法的に税負担を減らす手順を整理します。

 

長期譲渡所得の基本|税率・計算と短期との違い

長期譲渡所得とは、主に不動産などの資産を5年超(取得日から譲渡日までの保有期間)保有したうえで売却した際に発生する所得区分です。

所得税・住民税は〈分離課税〉で計算され、給与所得など他の所得と合算されないため、高い総合課税率が適用される心配を軽減できます。

 

短期譲渡所得(5年以下)に比べ課税率が低く抑えられる点が最大のメリットですが、不動産の長短区分は、譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年を超えるかで判定します(取得日の起算は通常「引渡日」)。「丸5年」ではなく「5年超」で長期扱いになります。

また、租税特別措置法では所有期間10年超の軽減税率特例が設けられ、不動産売却時の税負担をさらに圧縮できる場合があります。

 

つまり、高所得層が資産ポートフォリオを組み替える際は〈保有期間〉と〈適用特例〉をセットで検討し、短期譲渡との税率差をキャッシュフロー計画に反映させることが重要です。

  • 長期判定→5年超
  • 分離課税→他の所得と分離して課税
  • 10年超特例→一定要件で税率さらに軽減

 

長期判定の条件と税率早見表

長期か短期かは取得日の翌日から譲渡日までの保有期間が「5年を超える」かどうかで判定されます。たとえば2019年4月1日に取得した不動産を2025年4月2日に売却した場合、取得翌日の2019年4月2日からカウントして満6年経過しているため長期譲渡所得に区分されるのが一般的です。

税率は以下のとおり〈所得税+復興特別所得税+住民税〉の合計で計算され、長期か短期かで大きな差が生じます。

区分 税率(所得税+復興税+住民税)
長期譲渡所得 20.315%(15%×1.021+5%)
短期譲渡所得 39.63%(30%×1.021+9%)

 

【ポイント】

  • 所有期間が5年「超」か「以下」かで課税率が約2倍変わる
  • 取得日は売買契約日または引渡日が基準→複数証憑で要確認
  • 10年超保有で軽減税率特例(14.21%など)を使えることがある
長期判定でよくある誤解
  • 「丸5年」ではなく「5年と1日」で長期扱い
  • 相続取得でも被相続人の取得日を引き継ぐ

 

譲渡所得計算式と取得費・譲渡費用の整理

譲渡所得税は譲渡所得=譲渡価額−(取得費+譲渡費用)−特別控除の式で求められます。取得費には購入代金のほか仲介手数料・登録免許税・不動産取得税などが含まれ、譲渡費用には売却時の仲介手数料・測量費・建物解体費などが計上できます。

取得費が不明の場合は概算取得費(譲渡価額の5%)で代替できますが、実額より低く課税所得が増える可能性があるため、領収書や契約書を保存し実額計算する方が有利とされています。

  1. 譲渡価額→売買契約に記載の総額
  2. 取得費→購入代金+付随費用(仲介手数料など)
  3. 譲渡費用→売却時の諸経費
  4. 特別控除→3,000万円控除など該当するものを差し引き
  5. 課税所得×税率=税額

 

取得費が不明な場合の注意点
  • 概算取得費は5%→実額より不利になる可能性
  • 相続不動産は被相続人の取得費を引継ぎ→古い書類の保管が重要

 

高所得者が使える主要節税特例

長期譲渡所得には、一定の要件を満たすことで税負担を大幅に軽減できる特例が複数用意されています。代表例は①自宅売却時の3,000万円特別控除、②所有期間10年超の軽減税率特例、③事業用資産の買換え・交換特例、④相続財産や公共事業の収用に伴う税優遇の4つです。

これらは互いに排他的なケースも多く、適用順序や組み合わせによって実効税率が大きく変わるとされています。

 

特例を最大限活用するには〈要件確認→シミュレーション→証憑準備〉の3ステップで準備し、譲渡契約日と取得日が要件を満たすかを早期に税理士へ相談することが推奨されます。

  • 特例ごとに適用期限や重複可否が異なる
  • 契約日・居住要件・同一年内の他譲渡に注意
  • 証拠書類の不足は後から補完が難しい

 

3,000万円特別控除の適用条件

自宅を売却した場合、長期・短期を問わず譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度があります。適用を受けるには➍つの主要要件を満たす必要があるとされています。

 

【適用要件】

  • 居住期間:譲渡時点で自己の居住用(空き家も一定期間まで可)
  • 譲渡期限:空き家転居後3年を経過する年の12月31日まで
  • 所有者:同一年内にほかの自宅特例を受けていない
  • 譲渡先:親族や同族会社等への売却ではない

 

控除適用後の課税所得がゼロになれば譲渡所得税・住民税ともに発生しませんが、住宅ローン控除との併用はできないとされています。

また、同一年に複数の不動産を売却しても控除は「1人1回」までとされているため、譲渡時期を翌年へずらすなどの調整が効果的です。

活用ポイント
  • 譲渡契約日を調整→翌年1月以降なら控除の“2年活用”が可能
  • 共働きの場合→夫婦それぞれの名義分で控除を重ねられることがある

 

所有10年超の軽減税率特例

居住用財産を10年以上保有して売却した場合、課税長期譲渡所得のうち6,000万円以下の部分については14.21%(所得税10%×復興税+住民税4%)、6,000万円超の部分でも20.315%へ軽減できる特例があります。

3,000万円特別控除と併用する場合は、控除後の課税長期譲渡所得に対し軽減税率を適用する段取りとされています。

課税長期譲渡所得 所得税+復興税 住民税
6,000万円以下 10.21% 4%
6,000万円超 15.315% 5%

 

適用には〈所有期間10年超〉に加え〈譲渡年の前年・前々年に自宅特例を利用していない〉など追加条件があります。長期保有の利回り低下と軽減税率の差を比較し、10年到達後に売却するか、賃貸化して家賃収入を得続けるかをシミュレーションすると効果的といわれています。

注意したい落とし穴
  • 10年判定は“取得翌日”起算→契約日が1日違うと不適用
  • 親族間売買は軽減税率対象外の可能性がある

 

事業用資産の買換え・交換特例

事業用の土地・建物を売却し、新たな事業用資産へ買換える場合、一定金額まで譲渡益の全部または一部を課税繰延できる制度があります。要件はおおむね次のとおりとされています。

 

【主な要件】

  1. 譲渡資産:事業用土地・建物(賃貸用も含む)
  2. 買換資産:譲渡年の前年1月1日~翌年12月31日取得
  3. 面積上限:譲渡資産の5倍以内
  4. 繰延率:買換資産取得価額÷譲渡価額(上限80%相当)

繰り延べた譲渡益は将来の売却時に課税されますが、その時点で長期譲渡所得として低税率が適用できる場合や、相続によって課税が実質ゼロになる可能性もあると考えられています。

 

実務での活用例
  • 老朽アパート売却→耐震基準適合の新築マンションへ買換え
  • 狭小地売却→郊外の大型物流倉庫用地へ集約

 

相続財産・公共事業等の税優遇

相続や遺贈で取得した不動産を一定期間内に譲渡した場合、相続税額のうち不動産に対応する部分を譲渡所得の取得費に加算できる「取得費加算の特例」があります。

加算期間は相続開始年の翌年から3年以内の譲渡が目安とされています。これにより実際の取得費が大きくなり、課税譲渡所得を減らせる可能性があります。

 

また、公共事業のために収用・移転した場合は「収用等の特別控除」として最大5,000万円を控除できるほか、代替資産を取得すれば先述の買換え特例よりも高い繰延率(100%相当)が認められる場合があります。

  • 取得費加算特例→相続税額を取得費へ上乗せ
  • 公共事業収用→5,000万円控除または全額繰延
  • 農地保有合理化事業→税率軽減や控除が追加

 

利用前のチェックポイント
  • 適用期限は相続開始後3年内→売却スケジュールを逆算
  • 収用等は国・地方公共団体からの正式通知が必要

 

売却タイミングと資産設計で節税効果を最大化

長期譲渡所得の節税効果は、売却する「年」と「月」をどう設計するかによって大きく変わるとされています。

5年超・10年超の保有期間判定に加え、同一年内に複数資産を譲渡するかどうか、損益通算が必要な赤字資産の有無、翌年以降へ繰り越せる控除残高など、複数の変数を組み合わせて最適解を導くことが重要です。

 

たとえば5年11か月で売却予定の物件を1か月繰り延べるだけで税率が約半減する可能性があり、事前のシミュレーションは欠かせません。

さらに、高所得層の場合は給与・配当・不動産所得など他の税目との合算キャッシュフローを踏まえ、税金だけでなく手元資金の“使える時期”まで逆算しておくと資産運用の幅が広がります。

  • 保有期間5年・10年の判定日をカレンダーで管理
  • 複数物件を売る際は年をまたいで分散→控除限度額を有効活用
  • 赤字株式の売却時期と合わせて損益通算を最大化

 

5年超・10年超の売却シミュレーション

5年・10年の保有期間境目にある物件では、シミュレーションを行い「税率差」と「機会損失」を比較する方法が推奨されています。

以下は3,000万円特別控除を併用しないケースで、5,000万円の譲渡益が見込まれる投資用マンションを例にしたシナリオです。

保有期間 課税所得 概算税額
5年未満 5,000万円 約1,981万円(税率39.63%)
5年超 5,000万円 約1,016万円(税率20.315%)

 

税負担は約965万円差となり、同水準の家賃収入を1年得られたとしても税額差が上回る可能性が高いです。このため、保有期間境目に近い場合は売却を1年遅らせることでキャッシュフローが劇的に改善することがあります。

ただし、金利上昇や空室率悪化により譲渡価額が下落すれば、遅延による損失が増えるリスクも否定できません。

 

シミュレーションの着眼点
  • 家賃収入・管理費・修繕費の1年間総額
  • 譲渡価額の下落リスク(エリアの売買事例)
  • 金利動向と保有コスト(借入金の金利差)

 

損益通算・繰越控除を活かす時期調整

土地や建物などの譲渡による長期譲渡所得は、原則として不動産の譲渡所得同士でしか損益通算できず、株式や総合課税の不動産所得(賃貸など)とは通算できません。

一方、上場株式等の譲渡損失は、同じ「上場株式等の譲渡益」や「配当所得」とのみ損益通算でき、その控除しきれない部分は翌年以降3年間の繰越控除が可能です。

 

たとえば前年に2,000万円の株式譲渡損失があり、今年も株式譲渡益が出る予定なら、その利益から損失を充当し、課税対象を圧縮できます。

ただし、不動産の譲渡益とは直接相殺できないため、売却時期を株式譲渡益の発生年に合わせるなど、同じ所得区分内での時期調整が必要です。

 

【時期調整の手順】

  1. 前年・当年・翌年の同一所得区分(株式等/不動産譲渡)の損益を試算
  2. 該当区分の譲渡益発生日を調整し、控除枠を最大限活用
  3. 損失が残る場合は翌3年間の繰越控除計画を作成
留意点
  • 異なる所得区分(例:不動産譲渡益と株式損失)は損益通算できない
  • 繰越控除の適用には損失が発生した年から連続して毎年の確定申告が必要
  • 株式等の配当所得を申告分離課税で申告すれば繰越控除の充当対象にできる

 

不動産以外の長期譲渡所得との組合せ戦略

資産ポートフォリオの中に上場株式・未上場株式・暗号資産など、異なる長期譲渡所得が存在する場合、それぞれの税率や控除メニューを踏まえて売却順序を最適化する方法があります。たとえば、

  • 株式は特定口座で源泉徴収済み→確定申告不要のケース
  • 未上場株式は分離課税15.315%→赤字なら損益通算に寄与
  • 暗号資産は総合課税→所得区分が異なり逆効果になる場合

 

こうした特性を踏まえ、不動産の長期譲渡で生じた利益を株式の損失と相殺しつつ、暗号資産の含み益は翌年以降に繰り延べる──という多層的なプランを組むことで、総合的な税・キャッシュフローを最適化できる可能性があります。

組合せで節税する際のポイント
  • 所得区分ごとの課税方式(分離 or 総合)を確認
  • 源泉徴収済み利益は申告分離で上乗せ不要
  • 年度ごとに課税所得総額をシミュレーション→売却順を決定

 

キャッシュフローを守る納税・申告プロセス

長期譲渡益が確定した後は、手元の資金を枯渇させずに納税・申告を済ませるプロセス設計が欠かせません。高所得者の場合、売却益が大きくなりやすく、予定納税額や翌年度の住民税が急増する傾向があります。

そのため〈①納税資金を売却代金からどの程度確保するか〉〈②確定申告で過不足なく税額を確定させるか〉〈③還付・延納・分納などの制度を活用してキャッシュフローを平準化するか〉の三段階でプランニングすることが重要とされています。

 

とくに売却から納税までの期間差を「資金運用フェーズ」と捉え、つなぎ融資や短期運用商品を検討するなど、納税までの資金効率を高める工夫が大きなメリットにつながります。

  • 売却契約日から納税まで最短4〜5か月のタイムラグ
  • 所得税→翌年3月15日、住民税→6月以降分割納付
  • 計画的に延納・分納を組み込むと資金繰りリスクを軽減

 

分離課税の確定申告ステップ

譲渡所得は分離課税で計算されるため、確定申告書B〈第三表〉を用いて申告する流れが一般的です。提出期限は翌年3月15日ですが、電子申告(e-Tax)なら24時間提出でき、還付が早まるメリットがあります。

 

手続きは次の順序が推奨されています。

  1. 売買契約書・登記簿・領収書を整理し取得費・譲渡費用を確定
  2. 特例ごとに必要な添付書類(住民票・耐震証明など)を準備
  3. 第三表に譲渡所得の内訳を書き込み、特別控除額を入力
  4. 第一表で総所得と税額を確認し、還付か追納かを判定
  5. e-Taxで電子送信→マイナンバーカード方式・IDパスワード方式の選択
  6. 控除証明書や添付書類を電子データでアップロード、または別途郵送

 

提出書類 主な内容 注意点
譲渡所得の内訳書 取得費・譲渡費用・特例適用額 特例は摘要欄に必ず記載
第三表 分離課税所得の計算 控除後の所得額を転記
添付書類台紙 登記事項証明書・住民票など 電子提出ならPDF化
提出前チェックリスト
  • 売却価額と登記簿の地番が一致しているか
  • 特例ごとの「適用条文番号」を記載したか
  • 電子申告の場合は電子納税口座を登録済みか

 

納税資金計画と延納・分納制度

譲渡所得税は3月15日までに現金一括納付が原則ですが、税額が大きい場合〈延納〉〈分納〉を申請して資金繰りを調整できます。

延納は1回で最長1年、分納は原則4回までに分割する方法が多く採用されています。利用の鍵を握るのは「事前の納税資金プール」と「必要書類の準備」です。

  • 納税資金のプール方法
    • 売却代金の一部を定期預金やMRFで保管→元本確保
    • つなぎ融資(不動産担保ローン)→短期資金を確保
  • 延納・分納の申請手順
    • 納税の猶予申請書を税務署へ提出→源泉徴収票など添付
    • 分割計画書に分納額と納付日を明記→承認後に納付書が交付
  • 延滞税と利子税
    • 延納→利子税(年1.8%前後)
    • 分納→延滞税(年2.4%前後)

 

延納・分納利用時の注意点
  • 申請は申告期限内→期限後は原則不可
  • 担保提供を求められる場合がある→不動産評価額を確認
  • 計画通り納付できないと猶予が取り消され延滞税が加算

 

譲渡所得税の還付・修正申告の実務

譲渡所得の計算誤りや特例適用漏れが後日発覚した場合、還付申告や修正申告で税額を調整できます。還付申告は申告期限から5年間提出でき、加算金はかからず還付加算金が受け取れることがあります。

一方、修正申告は税額が増える場合に行い、申告期限から1年以内なら過少申告加算税が5%減額、1年超なら10%加算されるとされています。

 

【実務フロー】

  1. 誤りを特定→取得費・特例要件・計算式を再確認
  2. 必要書類を準備→訂正後の第三表・内訳書を再作成
  3. 税務署へ電子または書面で提出→還付の場合は銀行口座を記載
  4. 税務署から審査通知→還付金の支払いまたは追納指示

 

申告種類 提出期限 加算税・還付加算金
還付申告 法定申告期限から5年 還付加算金あり
修正申告 誤りに気付いた時点 5%〜15%の過少申告加算税
スムーズに還付を受けるコツ
  • 領収書・証明書をPDF化→e-Tax添付で審査期間を短縮
  • 計算ソフトのデータ保存→差分入力で再計算エラーを防止
  • 口座情報の誤記は還付遅延に直結→申請前に再チェック

 

専門家活用とシミュレーション事例

長期譲渡所得で節税効果を最大化するうえでは、税理士とフィナンシャルプランナー、場合によっては不動産鑑定士も巻き込みながら、売却前後のキャッシュフローを「見える化」することが欠かせません。

特例適用の可否はもちろん、売却価額の変動や借入金利の上昇、将来の再投資案件など複数シナリオを同時に検証し、最も手残りが多いタイミングを選ぶアプローチです。

 

専門家に任せることで税務調査リスクを抑えつつ、所得税・住民税・住民税均等割・社会保険料などの総合負担を横串で比較できる点が大きなメリットとされています。

  • 税理士→確定申告・特例要件の確認・資金繰り計画
  • FP→ライフプランと再投資先のマッチング
  • 鑑定士→譲渡益・評価額の妥当性チェック

 

税理士への依頼タイミングと費用感

税理士に依頼するベストタイミングは、〈売却検討を始めた時点〉と〈売買契約締結前〉の二段階に分けて考えると効果的といわれています。

譲渡価額や手付金の設定が確定する前に相談すれば、保有期間判定や特例要件を満たすよう日程を調整でき、結果として税負担を数百万円単位で圧縮できる可能性があります。費用は以下が目安です。

サービス内容 報酬相場 備考
申告代行のみ 20万〜30万円 第三表・内訳書作成
節税コンサル込み 30万〜60万円 特例適用判定・日程調整
成果報酬型 減額税額の10〜20% 着手金5万〜10万円

 

費用対効果を高めるコツ
  • 複数物件を同時売却→一括見積で割引交渉
  • 電子申告データを共有→入力工数を削減し報酬を圧縮

 

売却前シミュレーションで見る税負担差

実際に売却する前に、〈特例の有無〉〈保有期間〉〈複数年分散〉を変数としてシミュレーションを行うと、税負担差が可視化されます。以下は5,000万円の譲渡益が見込まれる物件を例に、売却時期と特例の組み合わせを比較した表です。

パターン 適用特例 概算税額
A 5年未満・特例なし 約1,981万円
B 5年超・特例なし 約1,016万円
C 5年超・3,000万円控除 約405万円
D 10年超・控除+軽減税率 約142万円

 

この例では、パターンAとDで税負担に約1,800万円の差が生じる計算となります。さらに、翌年に繰越控除が残る株式損失2,000万円を充当すれば、パターンDの税額はゼロ近くまで圧縮できる可能性があります。

シミュレーション時の注意点
  • 売却価額の下落リスクを複数シナリオで評価
  • ローン残債・繰上償還手数料を税後キャッシュで控除

 

長期保有か法人化かの判断ポイント

高所得層が大型物件を保有している場合、「長期保有を続けて家賃収入を得る」か「個人から資産管理会社へ移して法人化する」かが大きな分岐になります。判断の主な軸は以下の3点とされています。

  • 税率差→法人実効税率は約30%だが、給与所得控除や退職金を活用すれば実効負担が下がる
  • 相続・事業承継→株式評価による移転で贈与税・相続税が軽減できる
  • 金融機関評価→法人名義のほうが追加融資を受けやすい場合がある

 

【個人保有 vs 法人化の比較】

項目 個人保有 法人保有
所得区分 不動産所得・譲渡所得 法人税・役員報酬
節税策 長期譲渡特例 損金算入・退職金
資金調達 個人属性に依存 事業計画で評価

 

判断フロー
  • 年間キャッシュフローが税後1,000万円超→法人化を検討
  • 相続人が複数→株式分散で争族リスク低減

 

まとめ

長期譲渡所得の節税は①保有期間5年・10年の判定②特例の重ね掛け③売却タイミング調整が鍵です。取得費や経費を正しく整理し、シミュレーションで最適な売却年を選び、必要に応じて税理士へ相談すれば、税負担を最小化しながらキャッシュフローを最大化できます。