高所得なのに税金が重い――そんな悩みを解消する鍵が「マンション投資」です。本記事では減価償却・損益通算・必要経費の3メカニズムを図解し、最適な物件選びや法人スキーム、デッドクロス回避策まで網羅。初心者でも失敗なく節税メリットを最大化するステップを解説します。
読んだその日から具体的に動けるチェックリスト付きで、給与所得者でも短期間で税負担を軽くし資産形成へ一歩踏み出せます。ぜひ参考にしてください。
目次
節税ができるマンション投資の3大メカニズム

マンション投資で節税効果を得るには、大きく分けて、減価償却費で帳簿上の赤字を作る、赤字と給与所得などを損益通算する、必要経費をもれなく計上して課税所得を圧縮する──という三つのメカニズムを押さえることが必須です。
これらは税法に明記された合法的な方法であり、適切に活用すればキャッシュフローを維持しながら税負担を軽くできます。特に高所得者ほど節税インパクトが大きく、投資判断の成否を左右します。
以下の表で概要を整理した上で、各メカニズムの具体的な仕組みを詳しく見ていきましょう。
メカニズム | 仕組み | 主な効果 |
---|---|---|
減価償却 | 建物価格を耐用年数で費用化 | 帳簿上の赤字を計上し課税所得↓ |
損益通算 | 不動産所得の赤字を給与所得と合算 | 所得税・住民税を直接減額 |
必要経費 | 管理費・金利などを計上 | 税負担を毎年コントロール |
減価償却で「帳簿上の赤字」を作る方法
減価償却とは、建物の取得価格を耐用年数に応じて毎年費用化し、税務上の利益を圧縮する仕組みです。
例えば2,000万円の築古マンション(木造耐用年数22年)を1,000万円で購入し、建物部分を800万円と評価した場合、簡便法を用いて4年で償却すれば年間200万円の減価償却費が計上できます。家賃収入が年間150万円なら帳簿上は50万円の赤字となり、その分だけ課税所得が減ります。
- 築年数が古いほど残存耐用年数が短く、償却ペースを早められる
- 建物比率を高めると償却額が増えるため、売買契約書の内訳が重要
- 法定耐用年数の20%(最低2年)を「残存耐用年数」として償却できる(例:RC造47年なら残存9年)
- 鑑定士や税理士に依頼して建物価格を適正に区分
- 木造なら築20年以上、RCなら築30年以上を狙うと残存年数が短縮
なお、償却期間終了後は費用計上が減り税金が増えるため、長期プランで「デッドクロス」に備えた資金計画が欠かせません。
損益通算で給与所得と相殺する流れ
不動産所得で生じた赤字は、原則として給与所得や事業所得と損益通算できます。これにより源泉徴収された所得税・住民税の一部が還付され、手取りが増える点が大きなメリットです。
通算手続きは確定申告で行い、「不動産所得の金額」欄に赤字額を入力するだけとシンプルです。
- 給与所得2,000万円、税率33%の場合、不動産赤字が200万円あれば約66万円の税還付
- 住宅ローン控除と併用する場合、控除限度額を超えないようシミュレーションが必須
- 青色申告を選択すると損失繰越(最大3年)が可能で、翌年以降も節税できる
- 土地のみの取得費や元本返済分は赤字要件に含まれない
- 計画的に赤字を出さないとローン返済に支障を来す恐れがある
さらに2023年税制改正により、一定の高額所得者は損益通算の制限が議論されています。最新の税制情報を税理士に確認して、長期的な節税効果を見積もりましょう。
必要経費で課税所得を圧縮するポイント
マンション経営に伴う支出のうち、事業関連が明確で領収書を保管しているものは原則として必要経費に算入できます。
代表的な経費は管理委託料・修繕費・火災保険料・ローン金利・広告費などで、これらを計上することで毎年の課税所得を調整できます。
- 管理委託料:家賃の5〜10%が目安
- ローン金利:元本ではなく利息部分のみ経費
- 小修繕は即時費用化、大規模修繕は資本的支出として償却
- 確定申告に備え、レシートは月次でクラウド会計へ入力
- 入居者募集の広告費を忘れていないか
- 区分所有の場合、管理組合への積立金も対象か確認
経費計上のコツは「事業関連性を説明できること」と「証憑を適切に保存すること」です。税務調査で否認されるのは、領収書不備やプライベート支出との区分が曖昧なケースが大半です。クラウド会計ソフトで科目を統一し可視化することで、初心者でもミスなく経費処理ができます。
節税メリットが最大化しやすい人・物件・法人形態

マンション投資による節税効果は「誰が・どんな物件を・どの名義で保有するか」で大きく変わります。特に所得税率33%以上の高所得者は、減価償却や損益通算のインパクトが大きく、築古物件や法人スキームを組み合わせることで実効税率を大幅に下げられます。
一方、年収500万円未満の投資家は、赤字を出し過ぎるとかえってキャッシュフローを圧迫するため注意が必要です。
ここでは〈投資家属性〉〈物件タイプ〉〈保有形態〉の観点から、節税メリットが最も高まりやすい組み合わせを整理し、その理由を具体的に解説します。
投資家属性 | 適した物件 | 有利な保有形態 |
---|---|---|
年収900万円超 | 築25年以上木造アパート 築30年以上RC一棟 |
個人名義で減価償却活用→後年法人へ移管 |
年収500〜900万円 | 築20年前後RC区分・一棟 | 個人名義+青色申告で経費計上 |
相続対策重視 | 駅近築浅区分×複数戸 | 資産管理会社+持株比率調整 |
高所得者が狙うべき築古木造/RC物件の選び方
高所得者が節税メリットを最大化するには、耐用年数が残りわずかな築古物件を活用し、短期間で減価償却費を多く計上する戦略が有効です。木造は築20年以上で残存耐用年数4年、RCの場合でも簡便法では残存耐用年数はおおむね9〜10年(法定47年×20%、端数切捨て)となります。
購入時は「建物価格の比率」と「修繕履歴」が重要で、建物比率が低いと償却額が減り、修繕履歴が不足していると突発的な修繕費が利益を圧迫します。
- 固定資産税評価額や簡易鑑定で建物部分を算出し、売買契約書へ明記
- 外壁・屋上防水・給排水管の更新時期を確認し、長期修繕計画を入手
- 空室率はエリア平均以下か、家賃下落率が緩やかなことを要チェック
- 構造:木造なら耐震基準適合証明の取得可否、RCなら配管更新履歴
- 金融機関:築年数ではなく残存耐用年数で評価してくれる銀行を選択
なお、築古物件は表面利回りが高く見えても、修繕費や空室リスクが大きい点を忘れず、キャッシュフロー試算を複数年で行うことが欠かせません。
個人と法人どちらが有利?税率比較シミュレーション
個人と法人では適用される税率と控除枠が異なります。個人は累進課税で最高45%+住民税10%、一方法人(資本金1億円以下)なら実効税率約30%前後で頭打ちです。
高所得者ほど法人化による節税余地が広がりますが、法人設立・維持コストや赤字の損益通算制限があるため、投資規模と収益構造に応じてシミュレーションが必須です。
課税主体 | 課税所得1,000万円時の税額 | 課税所得2,500万円時の税額 |
---|---|---|
個人(所得税+住民税) | 約280万円 | 約985万円 |
法人(中小実効税率) | 約253万円 | 約756万円 |
- 赤字を給与所得と通算したい間は個人名義が有利
- 黒字転換後に所得が増えたら法人へ売却(適格現物出資)も選択肢
- 法人化に伴う社会保険加入で手取りが減少する点は要確認
- 赤字は他所得と通算できず繰越控除のみ(最大10年)
- 毎期必ず法人住民税7万円超が発生し、小規模物件だと逆効果
シミュレーションは税理士と共同で行い、将来の所得推移や物件買い増し計画を織り込むことが成功の鍵です。
相続税・贈与税を抑える持ち分設定と法人スキーム
マンション投資は節税効果だけでなく、相続・贈与時の課税評価を下げやすい点も大きな魅力です。
建物の相続税評価額は固定資産税評価額、土地は路線価を基準に算出されるため、実勢価格より2〜3割低く評価されることが一般的です。さらに持ち分を複数人に分けたり、資産管理会社を活用することで相続税・贈与税の圧縮が可能です。
- 暦年贈与(110万円非課税枠)を利用し持ち分を子へ段階的に移転
- 同族会社へ物件を現物出資し、株式を分散保有すると課税が一段低下
- 借入金付きで相続すると債務控除が適用され、評価額をさらに縮小
- 相続開始前3年以内の贈与は相続財産へ加算されるためタイミングに注意
- 親:個人名義で築古RC一棟を取得し減価償却&損益通算を享受
- 子:暦年贈与+持株会社設立で持ち分を移転し納税額を最小化
ただし、過度な節税目的の名義変更や評価引き下げは税務署から否認されるリスクがあります。
贈与契約書の作成や適正な時価評価、事業実態のある法人運営を徹底し、専門家のチェックを受けながら進めることが重要です。
節税目的マンション投資の落とし穴と対策

節税効果に惹かれてマンション投資を始めたものの、制度やキャッシュフローを誤解したまま進めると「かえって税金が増えた」「資金繰りが厳しい」という事態に陥りがちです。
特に〈減価償却の終了タイミング〉〈入居率の急低下〉〈売却時の譲渡所得税〉は見落とされやすく、対策を講じていないと利益を食い潰します。
ここでは代表的な3つの落とし穴を取り上げ、発生メカニズムと具体的な予防策をまとめました。まずは全体像を整理し、次の項目で詳細を確認しましょう。
落とし穴 | 発生タイミング | 主な対策 |
---|---|---|
デッドクロス | 減価償却終了後 ローン残高多い |
繰上返済・法人化で 税率平準化 |
新築区分の利回り低下 | 購入直後〜築10年 | 家賃下落率の試算 修繕積立金の確認 |
譲渡所得税の負担増 | 売却時 | 長期譲渡への持ち越し 買換え・交換特例 |
デッドクロス発生で税負担が逆転するケース
デッドクロスとは、減価償却費が尽きることで帳簿上の赤字が黒字に転じ、所得税・住民税が急増する一方で、ローン元本返済が続くためキャッシュフローが悪化する現象です。
例えば築25年木造アパートを4年で全額償却すると、5年目以降は減価償却費ゼロ・ローン返済は横ばいとなり、税負担が一気に跳ね上がります。
- 残存ローン1,500万円、家賃収入600万円、経費200万円の場合、4年目までは所得ゼロで課税なし→5年目から課税所得400万円発生
- 実効税率30%で年間約120万円の追加納税が生じ、手残りが急減
- 固定金利ローンの場合は金利負担が重く、繰上返済を検討しにくい
- 購入時に減価償却終了年とローン残高の推移をシミュレーション
- 黒字化が見えた年に繰上返済や金利交渉で支出を前倒し
- 黒字が続く場合は資産管理会社へ物件売却し、法人税30%で頭打ちに
さらに、次期物件の購入で再度減価償却費を計上し黒字を相殺する「買い増し戦略」も有効です。ただし過度なレバレッジは資金繰りリスクを高めるため、自己資金比率と返済比率を必ずチェックしましょう。
新築区分で失敗する典型パターン
新築区分マンションは「手間が少ない」「長期で安定」といったイメージが先行しがちですが、利回り低下と税負担増加が重なり最終的に赤字化するケースが少なくありません。
販売価格には広告費・販売手数料が上乗せされており、賃料相場が5年で10〜15%下落する一方、返済額と固定資産税はほぼ固定です。
- 表面利回り4%、金利1.5%・35年ローンの場合、家賃下落3%で実質利回り2%台に低下
- 修繕積立金は新築時の数千円から築10年で2〜3倍に増額される
- 減価償却はRCの耐用年数47年で薄く伸び、節税インパクトが小さい
- サブリース契約は2年ごとに家賃改定があり、下方修正が前提
- 購入価格が相場より高く売却時に含み損が生じる
- 家賃下落と修繕積立金増額を見込まずキャッシュフローが悪化
対策として、中古区分との利回り比較、長期修繕計画と管理費の増額幅を確認、販売会社の家賃保証条件(免責期間・解除条件)を精査することが必須です。
将来的に一棟物件へステップアップする際の頭金確保を優先し、区分投資はポートフォリオの一部に留める選択も有効でしょう。
物件売却時の譲渡所得税を最小化する出口戦略
マンション投資で得た節税効果を最終的に確定させるのは「出口」つまり売却です。譲渡所得税は〈所有期間5年以下=短期〉〈5年超=長期〉で税率が約2倍異なり、さらに譲渡益から購入費用や譲渡費用(仲介手数料・解体費用など)を差し引けます。
- 短期譲渡:税率39.63%(所得税30%+住民税9%+復興特別所得税)
- 長期譲渡:税率20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税)
- 特定居住用財産の3,000万円特別控除は投資用には適用不可
- 買換え特例(8000万円控除)は要件が厳しく計画が必須
- 5年超保有し長期譲渡税率を適用(取得日翌年1月1日起算に注意)
- 譲渡損が出た場合は他の長期譲渡益と3年間の繰越控除で相殺
加えて、相続・贈与により名義を移したうえで法人へ現物出資し、株式を段階的に売却する「法人スピンオフ型」も譲渡税を抑える有効な手段です。
ただし、移転コスト(登録免許税・不動産取得税)と評価額の算定方法が複雑なため、税理士・司法書士へ事前相談することで不測の納税リスクを回避できます。
節税×マンション投資を成功に導く実践ステップ

節税効果を最大化しつつ長期安定運用を実現するには、購入前のシミュレーションで出口までの数字を見える化し、信頼できる専門家から一次情報を得て最適な融資・物件を確保し、毎年変わる税制改正に素早く対応する――という三つの行動を並行して進めることが重要です。
特に資金計画と税制チェックを怠ると、想定外の税負担や修繕費でキャッシュフローが一気に悪化する恐れがあります。
以下の表で全体像を整理したうえで、各ステップを具体的に深掘りしていきましょう。
ステップ | 主なタスク | 得られる効果 |
---|---|---|
①シミュレーション | 減価償却・返済・売却益の試算 | デッドクロス・資金ショート回避 |
②専門家・情報収集 | 税理士・業者の比較と面談 | 最適スキームと融資条件を獲得 |
③税制チェック | 改正点の確認と申告対応 | 還付漏れ防止・ペナルティ回避 |
事前シミュレーションと資金計画の作り方
投資判断を誤らないためには、購入前に10〜15年スパンでキャッシュフロー推移を可視化し、減価償却終了後や金利上昇時の税負担も織り込む必要があります。
まずは融資条件(借入金利・期間・元利均等返済)を銀行から複数取得し、空室率・家賃下落率・修繕費を控えめに設定して損益計算書(PL)と資金繰り表を作成しましょう。
- 家賃下落率:都市部1%、郊外2〜3%で試算し保守的に設定
- 修繕費:RCなら毎年家賃収入の5〜7%、木造なら3〜5%を目安
- ローン残高と純資産の推移をグラフ化し、LTV(負債比率)を監視
- 出口価格は周辺実売事例の中央値×将来家賃下落率で算出
- クラウド財務ツールに月次データを連携し、実績値で都度更新
- 減価償却費が切れる年に繰上返済や買い増しの代替案も同時試算
数字の裏付けが取れれば、予想外のイベントが起きても「計画のどこを修正すれば乗り切れるか」が明確になり、精神的なブレも小さくなります。
専門家(税理士・不動産会社)選びと情報収集術
節税効果を正しく享受するには、賃貸経営と所得税法に詳しい税理士、投資家向け融資と築古物件の目利きに強い不動産会社をパートナーにすることが不可欠です。
選定時は「経験年数」「不動産投資実績」「報酬体系」の三つをチェックし、面談で具体的な節税事例を提示してもらいましょう。
- 税理士候補には青色申告の導入件数や法人設立サポート実績を質問
- 不動産会社は金融機関ごとの融資通過率や管理戸数の推移を開示してもらう
- 国税庁、金融庁、国土交通省が公開する一次データを定点確認
- SNSコミュニティは複数参加し、成功例よりも失敗談に注目して情報精度を高める
- 「減価償却が切れた後の税金対策をどのように提案しますか?」
- 「過去1年で融資を通した築古RC案件の事例と金利条件を教えてください」
複数の専門家に同じシミュレーションを提示し、提案内容と費用を比較する「セカンドオピニオン方式」を取ると、偏った情報に惑わされにくくなります。
最新税制に対応するチェックリスト
税制は毎年12月の税制改正大綱で見直され、マンション投資に関係する減価償却・損益通算・法人税率も細かく変動します。
改正内容を見逃すと、過少申告加算税や重加算税といったペナルティで節税効果が相殺されるため注意が必要です。
- 国税庁「タックスアンサー」検索でキーワード:不動産所得・青色申告
- 税理士会や金融機関が開催する無料ウェビナーで改正ポイントを確認
- 耐用年数見直しや損益通算制限の動向は与党税調資料で一次確認
- 確定申告ソフトのアップデートを毎年1月末までに適用
- 減価償却の特例延長・終了予定を確認
- 損益通算の所得制限ラインが引き上げられていないか
- 中小法人の実効税率や外形標準課税の対象拡大予定
チェックリストをもとに年初に「対応フラグ」を立て、2月上旬までに専門家へ相談するワークフローを組めば、申告直前のドタバタを防げます。変化の早い制度を味方につけることで、マンション投資の節税効果と資産拡大を両立させましょう。
まとめ
マンション投資は減価償却・損益通算・経費計上を活用すれば、給与所得者でも合法的に税負担を大幅カットできます。
高所得者向け築古物件や法人化スキームを選び、デッドクロス・譲渡税の罠を回避すれば長期的な資産形成とキャッシュフロー向上が両立可能。記事のチェックリストとシミュレーションを使い、専門家と相談しながら今日から具体的な行動を始めましょう。節税効果と資産成長の相乗を狙える絶好の機会を逃さないでください。